大人になったからこそ手に入れることができる、ちょっといいモノ。それは実際に使いこなさないと、単なる散財になってしまうが、長く愛することができれば、「本当の上質」になる。ここでは各ジャンルで活躍し、独自の視点でモノに向き合う人々の愛用品を紹介。今の時代に、モノを買う意味や喜びを改めて探ってみたい。ここでは「Sumally(サマリー)」Founder & CEO、山本憲資さんの散財品を紹介する。

自分にちゃんとシンクロしていて、心に響くモノ、そしてしっかりと使うモノ

 今、僕はSumallyという会社で、Sumallyというソーシャルメディアサービスと、Sumally Pocketというリアルストレージの、ふたつのサービスを展開している。簡単にいうとソーシャルメディアのほうは、Want(ほしいもの)とHave(持っているもの)を、クリップしてアーカイブ&共有するというサービス。一方、Pocketはリアルに持ち物をデータ化して預かるというシロモノだ。これが、なかなか便利にできている。つまり、所有や物欲をクラウド化していくということをせっせとやっているわけだが、情報としても実物としても手元においておく必要がないという状態を追求していると、自分自身も徐々にモノに対してどこか達観するようになってきている(気がする)。持たなくてもいいじゃん、と。ただ、それでも持っていたいなぁと思うモノたちも、もちろんあるわけで、自分とちゃんとシンクロしていて、心に響くモノ。そしてしっかりと使うモノ。自分だけではなく世の中誰もが、もはやそういうものしか持ちたくないし、持てない時代になってきているとしみじみ感じる。ここではそんな時代でも、それでも持っていたいと思える愛しい対象をちょろちょろと小出しに紹介していければと思う。

 さて、MOYNATというブランド、聞いたことがある人もいれば、ない人もいるかもしれない。日本語では"モワナ"と発音する。1849年にポーリーヌ・モワナが創業したパリ最古のトランクメーカーで、戦後にはお店もなくなってしまって影を潜めていたようだが、2011年にLVMHのベルナール・アルノーが個人的に出資してブランドを復活させ、現在はパリのサントノーレ通りに本店を構える。復活前のMOYNATのトランクのシンボルは、クルマのボンネットの上にぴったりと積めるようにデザインされたカーブのある底面。画像検索などですぐに出てくるので、その美しい曲線をぜひ一度見てみてほしい。HERMESなどでキャリアを積んだインド出身のデザイナー、ラメッシュ・ネールが、バッグであったり財布であったり、そしてトランクであったり、その曲線をモチーフにしたデザインをフックに、眠れる美女を現代に蘇らせた。