銀座のイベントスペース「シャネル・ネクサス・ホール」で2月18日(日)まで開催中の、巨匠、フランク・ホーヴァットの写真展。後編となる今回は、会期がスタートする直前に開催されたプレスプレビューの模様をレポート。会場で語られたホーヴァット自身の言葉、特に、ココ・シャネルを撮影した際のエピソードからは、彼ならではの美意識とこだわりをうかがい知ることができる。

ただ、美しいエピソードをとらえたいだけ

 1950年代のデビュー以来、報道写真からファッション写真まで、幅広い分野で活躍してきた写真家フランク・ホーヴァットの個展が始まった。

 90歳を目前にしてなお旺盛な創作意欲を見せる作家自身も、オープニングに快活な様子で姿を見せ、プレスプレビューでは記者からの質問に真摯に答えた。

 タイトルにあるように、彼が切り取った「ある女性の一瞬」には、思わず振り返って“二度見”してしまうような瞬間の閃きがある。

 1960年代頃のファッションシューティングといえば、スタジオでの完璧なセッティング、キメキメのポージングに思わせぶりな表情、型にはまったスタイリング、というのがお決まりだった。そこへ現れたフォトジャーナリズム出身のホーヴァットは、何よりもファッションモデルたちに理想の女性像を求めてその世界に入ったというだけあって、よりいっそうリアルな「彼女らしさ」、その女性だけのもつ本質的な魅力を引き出すことにしか興味がなかった。

 過剰なメイクやウィッグをやめさせ、紋切り型のセクシーなポーズやつくり笑いを禁止し、カメラ目線さえいらないと言い切った彼の撮影現場は、当時のメイクアップアーティストやファッションエディターには不評で、「仕事のしにくい、面倒くさい人と思われていた」そうだ。

 しかし、時はまさにオートクチュールからプレタポルテへと移行する時代。先読みのできる編集長たちだけが彼の意図を理解し、ホーヴァットが独自に先駆けたストリートスナップのようなファッション写真はしだいに主流となっていく。