新たな技術や哲学を持つことがメゾンの向上につながる

アートへの造詣も深いボスさん。心斎橋店のB1には日本初の多目的スペースを設けて、芸術や文化に関するさまざまなイベントを行っていく考えだ。

 ボスさんが入社してから、ヴァン クリーフ&アーペルは積極的に各国で展覧会を開催。2012年、パリ・ヴァンドーム広場にジュエリー&ウォッチの学校「レコール ヴァン クリーフ&アーペル」を開校するなど、教育にも力を入れている。

「メゾンの職人技や美意識を発展させるためには、新たな技術、新たな哲学を持つことが大事だと考えています。1920年、1930年代に確立したメゾンのスピリットともいえる技術を継続、進化させるために、各国で展覧会を開いてさらに美しいものを作ることに挑んでいます。日本をはじめ、ジュエリー以外の装飾芸術分野に属するさまざまなアーティストや職人とコラボレートするのもその一環ですね。今春には北京で展覧会を開く予定です。ハイジュエリーには優れたクラフツマンシップが欠かせないことを啓蒙していくことも大事です。スクールでの教育はもちろん、各地でワークショップを開いて新たな技術にチャレンジすることは、メゾンのさらなる向上につながると思います」

 輝かしい伝統を継承しながら、さらなる発展を遂げるべく、積極的に展覧会やワークショップを開き、フランスはもとより他国のアーティストや職人とも交わっていく。そうした開かれた姿勢こそが、新たな煌めきを生み出していくのだろう。


終わりに代えて。Q&A3本勝負

Q1:CEOとして常日ごろ心がけていることは?

ボスCEO:最高のチームづくりのために大事なのは、一人ひとりの人材を見極めてそれぞれの才能を重んじる姿勢です。そのためのレシピはないし、時間はかかりますが……。私に同調してくれるだけの人は求めません。

Q2:ジュエリーにまつわる個人的な思い出は?

ボスCEO:若いときはロックミュージックに傾倒していて、ジュエリーとは無縁の生活でした。今ではすっかりジュエリーの世界に夢中だというのにね、残念ながら逸話と呼べるほどのものはないのですが、妻には文句を言われない程度にジュエリーを贈るようにしています(笑)。

Q3:仕事を忘れてリラックスするのは、どんなとき?

ボスCEO:家族と一緒に過ごすときです。バレエや展覧会を鑑賞したり、本を読んだり。今はアレクサンドル・デュマの古典を読み返しているところです。それと、カナダのコミック作家、ジェフ・ルミールの大ファンです。


Nicolas Bos
フランス・パリ生まれ。大学ではビジネスを専攻。1992年にカルティエ現代美術財団に入る。2000年、同じリシュモングループの傘下に入ったハイジュエラー、ヴァン クリーフ&アーペルに移り、クリエイティブディレクター兼マーケティング ディレクターに就任。店舗コンセプト、店舗開発、国際的ネットワークの構築などのブティックネットワークに腕を振るい、腕時計製作などメゾンの世界観を広げる。2009年にクリエイティブディレクターを兼任しつつ、ヴァイス プレジデントに就任。2010年にプレジデントを経て、2013年よりプレジデント兼CEOを務める。

Photo:Makoto Ito (Portrait) Text:Miho Kitagawa Editor:Kao Tani

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