歌舞伎界を代表する立女形であり、人間国宝の五代目・坂東玉三郎さんと、元宝塚歌劇団宙組男役トップスターで、現在は女優の凰稀かなめさん。究極の様式美を体現し続ける二人が“美しさ”と“エンターテインメントの未来”について語る。

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──歌舞伎も宝塚歌劇団も、いわば“型の美しさ”が見事な伝統芸能だと思います。お二人が考える“美しさ”とはどんなものなのでしょうか。舞台を拝見させていただいたのですが、完璧ともいえるフォルムの美しさに感銘を受けました。

坂東玉三郎さん(以下、坂東) 完璧でもないですけど、一応仕事ですから(笑)。こう言ってしまうと身も蓋もないように聞こえそうですが「これをやれば素敵に見える」という、何か特別な秘訣があるわけではないんですよね。ひとつ言えるとしたら、“ずっとやり続けていること”だから美しく見えるのかもしれない。宝塚の方が大きな羽根を背負って大階段を下りてくるときだって、綺麗に見えないといけないでしょう。そのためには随分と努力を重ねていらしたと思いますよ。凰稀さんはいかがでしたか?

凰稀かなめさん(以下、凰稀) はい。玉三郎さんのおっしゃるとおりで、羽根を背負っているときは、その羽根一枚一枚の先が、どこにあるかまで把握していました。舞台上の空調のわずかな風にも影響を受けてしまうので、それも込みで。

坂東 そうですよね。鏡の前で何度も何度も練習して、それを身体に染み込ませて、ようやく鏡がなくてもできるようにするんですよ。

凰稀 羽根もそうでしたけど、マントの扱いも同様でした。よく演出家の先生から「小道具の先まで自分の手だと思って動かしなさい!」と叱られたことを思い出しました(笑)。

坂東 あの大階段を下りてくるのも大変ですよね。ブーツのヒールが高いから足で探り探り下りるわけにもいかないのに、視線は正面にないといけないから、もう“体感”で下りるしかない。

凰稀 本当にそうでしたね。

──そうやって、身体に完全に染み込ませてた状態で動く、ということが美しさに繋がるのでしょうか? そういう意識で演じていらっしゃるのですか?

坂東 あんまり意識してないよね(笑)。

凰稀 はい(笑)。どちらかというと“当たり前”という感覚に近い気が。舞台は綺麗でなくては意味がないですから。