仕事も私生活も一見完璧に見えるキャリアウーマン、クリスティと、はた目からは何ひとつ持っていないけれどいつも笑顔で暮らすアルバイトのティンロ。30歳を目前に交錯する二人の人生を通して、揺れる年代の「幸せ探し」を描く話題作『29歳問題』。そもそもは香港で大人気の一人芝居だったこの作品、映画化で監督を務めたのは、舞台版で脚本・演出・主演を務めていたキーレン・パンさん。映画作品の大ヒットを受けて、国際的に一躍注目をあびる彼女に聞く、この作品を書き上げた30歳のとき、考えていたこと、考えていなかったこと。そして40代の今だからこそわかる、人生のあり方とは?

自分が書いた脚本で舞台をやってみたい。それ以外は考えなかった

自ら作、演出、主演(二役)を務める舞台劇「29+1」のヒットにより、香港を代表するクロスメディア・クリエーターに躍進。
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──キャリアのスタートは女優ですが、ゆくゆくは演出を、と考えていたのですか? パリへ留学したのはそのため?

 全然考えていませんでした。28歳のときに、香港戯劇協会の奨学金でパリ留学をしたのもたまたまです。先輩に「奨学金で違う世界を見てくれば?」と勧められて、まあやってみようかと挑戦したら通ってしまって。その時点ではパリ留学もセットになっていることは知らなかったし、キャリアアップなんて思いもしませんでした。

──帰国後にご自身のプロダクションをつくり、映画の原作となった一人芝居「29+1」を始めます。留学で得た刺激のようなものがあったのでしょうか?

 プロダクションの設立に関しては、パリへ行く以前から考えていました。自分で脚本を書き、舞台をやってみたいと思っていたんです。でも、資金もあまりないから大きな舞台はできないし……と友達に相談したら、「あなたってOLっぽく見えるから、OLものにすれば?」と。演出もやることにしたのは、自分が書いた脚本にダメ出しされるのは癪に障るから(笑)。とにかく自分の気持ちを満足させることが目的でした。

──日本では女優さん自身が脚本、演出を手掛けて一人芝居をやるというのはほとんど聞いたことがありません。香港ではよくあることですか?

 香港でもほとんどないです。映画『ラ・ラ・ランド』でエマ・ストーンが演じる女優・ミアも、脚本、演出、制作、主演の一人芝居をやっていたから、「あなたはミアね!」なんて言われました。

──ミアが上演した芝居のように、お客さんが集まらなかったら……といった心配はしませんでしたか? 

 自分で脚本を書いて芝居をやろう! と思った時点では、チケットが売れるかどうかなんて考えませんでした。でも発売してみたら結構売れてしまって。劇場は「セントラル」という香港でも人通りの多い繁華街でしたし、そこに掲げた「29+1」というタイトルから、「30歳の話だろうな」と興味を惹かれた人が多かったのかなと思います。

──「30歳」という言葉に香港の女性たちが反応したと?

 そうです。日本のみなさんには想像できないかもしれませんが、香港の女性は「30歳になること」をすごく恐れています。初演当時の13年前はもちろん、今もそれは変わっていません。私個人としては、まったくそんな風には思ってはいませんでしたけれど。

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