シャネル・ネクサス・ホールが主催している演奏会シリーズ「シャネル・ピグマリオン・デイズ」をご存じだろうか。これは年ごとに選ばれた5人の若手音楽家に、年間を通してソロコンサートを開催する機会を提供することで、未完成の芸術を支援していくプログラム。ぜひコンサートに足を運び、気鋭のアーティストたちが成長していくさまを体感したい。

音楽を愛する人たちの「耳」が、発展途上のアーティストたちを育てる

シャネル銀座ビルディングの4階に位置する、シャネル・ネクサス・ホール。

 ギリシャ神話に語源を持つ「ピグマリオン」という言葉には、才能を信じて支援し、開花させる人という意味がある。ココ・シャネルもまた「ピグマリオン」の異名をとり、パブロ・ピカソやイーゴリー・ストラヴィンスキーをはじめとする同時代の芸術家たちを情熱をもって支援したといわれる。

 彼女の精神を受け継ぎ、2005年の設立以来、アーティストを支援し続けているシャネル・ネクサス・ホール。その主要な活動のひとつが、若い音楽家たちを育成し、年間を通して数回にわたる演奏会の機会を贈るプログラム「シャネル・ピグマリオン・デイズ」である。

 このプログラムは広く一般に開かれていて、無料・抽選制のコンサートには、音楽を愛する多くの根強いファンが熱心に足を運び、若い芸術家を応援する。彼らの経験豊かな「耳」もまたこの活動を支えているのだ。

 選曲は音楽家に委ねられ、ときには冒険的な構成にチャレンジすることも。オーディエンスにとっては、あまりなじみのない名曲に出合えるのも楽しみのひとつだ。さらに演奏の前には必ず、自身が選んだ楽曲について、作曲の背景にある物語や曲想への思いなどを交えたプレゼンテーションを行うことが課せられている。若いアーティストにとって演奏とトークを同時に行うことは非常にハードルの高いことだが、テクニックだけでなく、聴衆と芸術をシェアするためのコミュニケーションスキルも鍛えられるのだ。