ファッションライターの栗山愛以さんが、ファッションの楽しさをイラストとともにひもとくブランド連載。前回オススメした〈ロエベ〉を、違う角度からもっと深掘りしてみる。

気鋭の若手デザイナーによって生まれ変わった〈ロエベ〉をもっとよく知る

 さて、〈ロエベ〉がレザーの質とクラフトマンシップに卓越した伝統あるブランドでありながら、ここ数年でモダンに一変したブランドである、ということは前回お伝えしたとおりだが、まだ私のようなファッションオタクが言うところの「モダンさ」があまりおわかりいただけていないかもしれない。そこで、今回はそのあたりをじっくりお知らせしたい。
 まず、見ていただきたいのがこのバッグだ。

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エレファント ミニ バッグ 各¥155,000

 いかにも、象さんである。ラグジュアリーブランドで、キャラクターもの!? と驚かれるかもしれないが、新生ロエベのファンにはもうお馴染みだ。最初にわれわれの度肝を抜いたのは、昨年の春に発売された、リアルに魚を模したゴールドのネックレスだっただろうか。以降、猫やコウモリのモチーフがバッグやアクセサリーに使用されてきた。最新コレクションでは、トーストのプリントや、猫のぬいぐるみのようなバッグが登場している。
 エレガントな雰囲気のコレクションにこうしたユーモアを突如入れてくる、そうした大胆不敵な感性はどこから来るのか。それは前回紹介した「青年」、ジョナサン・アンダーソンの仕業である。

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〈ロエベ〉クリエイティブ ディレクター ジョナサン・アンダーソン

 彼は1984年、北アイルランド生まれ。ファッションの専門学校ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション卒業後、2008年に自身のブランドを立ち上げ、2013年秋、29歳の若さで〈ロエベ〉のクリエイティブ ディレクターに就任した。世の流れとも即しているが、ファッション業界でもジェンダーレスと唱えられて久しい。彼は男女間でシェアできるデザインをいち早く打ち出してきた。ここ最近は、エレガントで大人っぽいスタイルが主流だ。

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〈ロエベ〉2017-18年秋冬コレクション

 新風を吹き込もうと、歴史あるブランドに若手デザイナーが抜擢されることは多いが、ジョナサンは前回紹介したように、ブランドに連綿と受け継がれているレザーを駆使することに加え、「ロエベ クラフト プライズ」という賞を設立したことも大きな功績だ。応募資格は「工芸技法の斬新な適用と芸術性あふれるオリジナルコンセプトを組み合わせること」。まさにジョナサン自身が〈ロエベ〉で行っている試みそのもので、何か同志と互いの努力を称え合おうとしているかのような気もしてくる。初回の今年は、ドイツ生まれのエルンスト・ガンペール氏の木製コンテナ『Tree of Life 2』が大賞を受賞。シルバーのトロフィーと5万ユーロ(約620万円)が贈呈された。なお、全ファイナリストの作品と共に、受賞者の作品は11月中旬から日本でも展示予定だ。

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「ロエベ クラフト プライズ」授賞式

 ところで、「クラフト プライズ」のプレゼンターは女優のシャーロット・ランプリングだった。彼女は2017年春夏のルックブックにも起用されており、御歳71歳。その歳にして、〈ロエベ〉の服がとってもお似合いなのだ。ランウェイにはもちろん十代のモデルも登場しているが、〈ロエベ〉は若くても、歳を重ねても着られる服だということがわかる。最近ではミレニアルズだのユースカルチャーだのがもてはやされ、「若さ」が優遇されがちな世の中ではある。しかし、誰しも歳はとるもの。〈ロエベ〉は、末長く共に付き合っていけるブランドなのである。

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栗山愛以
ファッションライター。1976年長崎県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業、大阪大学大学院修了。「コム デ ギャルソン」で広報担当を7年間務めた後、首都大学東京大学院を経てライター活動を開始する。現在は「GINZA」「VOGUE JAPAN」をはじめ、モード誌を中心に活躍中。毎年2回のパリコレクションに赴き、ファッションをこよなく愛する。
ロエベジャパン カスタマーサービス
TEL:03-6215-6116

Text&Illustration: Itoi Kuriyama Edit: Yuka Okada