ケリングが取り組む「Women in Motion」では、カンヌ国際映画祭期間中に「Women in Motion Award」と題し、映画界に貢献した女性を表彰する場を設けている。2017年の受賞者は映画界で新たな女性像を演じ続け、既存の価値観を挑発し続けるイザベル・ユペール。ここではその発言から、8月に日本公開になる最新主演作の『ELLE』での役柄までをひもとく。

映画が再生産し続けてきた「求められる女性像」

イザベル・ユペールのキャリア最高の演技と絶賛される作品『エル ELLE』は8月25日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。© 2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION – FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP

 男社会の映画業界、特にハリウッド映画で描かれる女性像は、その多くが「あくまで男性のストーリーを立てるための存在」で、献身的な妻や強い母、純真な少女や淫らな娼婦として――現実の女性はそのすべてを同時に持ち合わせているにもかかわらず――一面的に描かれてきた。いわばハリウッド映画は、現実社会で「求められる女性像」を再生産し、テキスト化してきたといっていい。

 2017年の「Woman in Motion」のアイコンとなったイザベル・ユペールは、そんな「求められる女性像」を軽々と飛び越えてきた女優。『ピアニスト』の教え子に奇妙な性的要求をし続けるピアノ教師役、『ヴィオレッタ』の幼い娘のヌードを撮り続けた写真家役に続き、主演最新作『エルELLE』で演じているのは、加害者とパワーゲームを演じるレイプ被害者だ。カンヌ国際映画祭でのトークパネルに登壇した彼女は、その役柄についてこんなふうに語っている。

 「私が演じているのは自由な女性ではなく、何が何でも生き残る女性、自由を勝ち取ろうとする女性です。脆さがありながら絶対に消え失せない強さを持つ女性。“ひねくれた”“サディスティックな”という表面的な形容は、私にはなんだかピンときません。私が演じる女性は、被害者意識や、被害者であることを拒絶してもがく、自由を手に入れようとする女性だと思います」

 並の女優なら臆してしまうような役に「挑戦する」という意識は、彼女にはないようだ。女性が美しくあること、清く正しくあること、優しくあること、社会に、そして男性に愛される存在であること――少なくともそういう存在であるべきだという同調圧力に、私たちは慣れすぎてしまっているのかもしれない。