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15カ国以上の生徒に、日本のネイルの技術を教える

 そこで単身シンガポールに渡り、ネイルサロンとスクールを起業。当初は内装工事が遅れるなど苦労も多かったが、ビジネスは次第に軌道に乗っていった。その後まつ毛エクステンションのサービスもスタート。現在では、サロンの顧客には在住日本人女性はもちろん、ローカルの女性も多い。またスクールには、ローカルの女性に加えてさまざまな国籍の人(フィリピン、モンゴル、インドネシア、ネパール、インドなど)が、日本の先端技術を自国に持ち帰って、自分のサロンを開きたいと夢見て通ってきている。2016年には、日本の安全で高い技術と衛生管理を広めることを目的に「日本ーアジア ネイル&アイ美容協会」を設立。技術だけでなく、衛生管理をきちんと教えるのも、平澤さんの大切な使命となっている。
「現在はシンガポールを拠点にしていますが、スクールの生徒さんの出身国は15カ国以上。お問い合わせもアフリカなど世界中から来ています。今はSNSやインターネットで世界中どこにでも簡単に繋がるので、今後はどこを拠点にしていても、世界中に求められるものを提供していけるのではと感じています」と、今後のビジネス展開について語る平澤さん。
 休日はお洗濯をしてプールで泳いでお料理をして……と家でのんびり過ごすごとが多いというが、たまにまとめて休暇をとったとき、近隣諸国のリゾートに気軽に行けるのもシンガポール生活のメリットだそう。

日本人よりも親切なシンガポール人

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「仕事をする上で、シンガポールと日本の違いは?」と聞くと
「日本だと“こうするのが常識”“これが当たり前”という、ある程度統一された暗黙の了解がありますが、シンガポールではそれぞれが違う常識、習慣で生活をしているので、自分がこうしてほしいということは、理由まで含めてきちんと伝える事が必要です」と、文化の違いから生じる齟齬(そご)を常に埋める努力が必要だという。
「シンガポール人は、わりとおおらかな人が多いと思います。“しょうがないね~”という許容範囲が他人にも自分にも日本人より広い。そのためにイライラすることもありますが、この“お互い様”の風潮は、精神的に楽に感じます。日本に比べて気持ちにゆとりがあるのか、他人も親切。お年寄りには席を譲るし、ベビーカーの人がいたら助ける。大きい鞄を持って電車に乗ったら、重そうに見えたのか若い男の子が席を譲ってくれたこともあります。東京は通勤時間も長いし、仕事でも常に高い水準を求められ、みんな疲れきっていて、プライベートで余裕がないように感じます」

 でもローカル同士のコミュニケーションには、なかなか日本人には理解しがたい事もあるようだ。
「シンガポールでは、例えば売り切れの商品があった場合、“入荷したら電話する”という約束は、まず、守られないことが多いです。日本ではビジネス上の約束を忘れるというのはありえませんが、私のスタッフでも、お客様との約束のお電話を忘れることがたまにあります。でもお客様も慣れているのか、さして気にしている様子もなく、結局ビジネスがいい形でまとまった、なんてこともありました。スタッフもお客様もシンガポール人の場合、それに見合った生活のリズムや、ビジネス上の価値観があるのかもしれません。日本のサービスは素晴らしいと言われますが、そればかりを100%追求するのも、どうかと考えさせられることがよくあります。日本式の押し付けではなく、ローカルのお客様にとって何が快適で価値があるのか、そしてローカルの社員がストレスなく仕事ができて、気持ちよくお客様に接することができる環境を考えることも大切だと思います」
 やはりビジネスの基本は「郷に入ったら郷に従え」なのかもしれない。

Photo:Hirasawa Text:Mika Charrier Edit:Mizuho Yonekawa

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