英語と「シングリッシュ」は違う言語

[画像のクリックで拡大表示]

 そして一番、苦労したのは言語だという。「アメリカに留学し、英語を話すことには慣れていたので、シンガポールでも問題ないだろうと思っていました。でもシンガポールの英語は中国語やマレー語が混ざった独特の発音なので、来た当初は何を言っているのか分からず大変でした。特に就職先はシンガポールの会社だったので、社員とのコミュニケーションが取りづらく、何度も聞き返して呆れられたこともありました。間もなく2年になるので、大分慣れましたね」という古出さん。いわゆる「シングリッシュ」と呼ばれる特別な英語の問題だ。
「日本では、通訳などバックオフィスの仕事をしていましたが、シンガポールで就職して金融業界の営業企画に挑戦できたことで、マーケティング、ビジネス戦略などに携わり、任せてもらえる仕事の幅が広がりました」と、現在の仕事に非常にやりがいを感じている古出さん。30代後半でシンガポールに来て、過去の経験とは関係なく新しいことにチャレンジできたことは、古出さんにとって大きな飛躍だったに違いない。今後はこの経験をいかして、他の国でも挑戦してみたいという。
「シンガポールは東京23区ほどの面積の小さな国ですが、気候も温暖で緑が多いので、休日にはハイキングを楽しんだりしています。またさまざまなアジアの料理の食べ歩きをしたり、日帰りで近隣のリゾート島に行き、安いマッサージを堪能することもあります」と、プライベートでは便利で近い海外旅行を日常的に楽しんでいる。


 今回、3人の日本人女性にインタビューをして感じたのは、3人とも南国の楽園での生活を満喫ながら、日々新しいことにチャレンジし、着実にキャリアアップをしているということだ。もちろん彼女たち自身の努力はいうまでもないが、性差別のないシンガポールという国が、ここで仕事をしている女性たちにさまざまなチャンスを与えてくれているのは紛れもない事実だろう。
 日常生活の中で英語をブラッシュアップし、世界中の国の人々とのビジネスセンスを培う……。そんな誰もが憧れる状況に身を置く彼女たちは、“メルティングポット”とよばれるシンガポールの中で、その好機を最大限に活用しているように思われた。
 シンガポール建国の立役者である李光耀(Lee Kuan Yew)首相は以前、談話の中で「資源も乏しく、限られた土地しかないシンガポールという国の一番の財産は“人材”である」といったことがあった。確かに魅力のある人材であれば、それがたとえ外国人であっても、ビジネスチャンスへの扉が大きく開かれている。新しいことへのチャレンジで獲得した苦労と経験は、いずれ必ずゆるぎない新たなキャリアとなって自身に返ってきてくれることだろう。 Ladies be ambitious!

Text:Mika Charrier Edit:Mizuho Yonekawa

前編
キャリアアップのため「渡星」という選択をした、3人の日本人女性に密着〈前編〉