そして「空との距離」シリーズ最新作となるヴァンジでの新作は、日高のさらなる展開を予期させるようなものとなっていた。

 その新作は、これまでの微妙な陰影の描きこみというより、フラットな塗りの黒の色面で、樹の物質的な存在感がより際立っている。この変化の背後には何があったのだろう。

ヴァンジ彫刻庭園美術館に展示された「空との距離」の最新作。Photo by Kenji Takahashi

「枝や葉と、空との距離の捉え方が徐々に変化して、枝葉そのものがまず空間に〈在る〉ということ、その存在のリアリティとともに感じられる距離感がとても気になり始めたんです。そしてこの〈在る〉という存在感を求めていくと、対象に近づくことが第一のように思えて、ドローイングを描くとき、以前は椅子や庭石に座って描いていたんですが、最近は脚立に座って描いています。

 ただこの対象に近づくということは、対象が持つ現実的な形を一層鮮明に見ることにもなって、これまで強く感じてきた、見つめれば見つめるほど見極められない、測り知れないという感覚と、もっとも隔たる感覚を両方併せ持つことになって。この表裏一体の感覚をどちらも切り捨てることなく、その先に生まれるものを自分の絵の上で見てみたいという思い、この〈在る〉という存在のリアリティとともに感じられる距離感を追い求めたいと強く思い始めました」