そして、この画面の変化には、私生活における激動の影響もあったという。

「これはとても個人的なことで、どこまで〈在る〉という存在とともに感じられる距離と関係しているかわからないのですが、今回の展覧会のオープニング2週間ほど前に、この2年間、自宅で介護してきた父を91歳で亡くしました。この父という〈存在〉。そして、この2年間という父と私たち家族の濃密な時間が、まさに今展の制作期間と重なったことで、これまではどちらかというと、絵を描く上で切り離して考えてきた個人的なこと、生活そのもの、生きることそのものが、当たり前のことかもしれないのですが、絵を描く上で切り離せない、ということを強く実感することになりました。そして今回の新作には、いま徐々に変化してきている自分自身の距離や空間に対する身体性、知覚のあり方が重なっているように感じています。この絵に残された変化に、正面から向き合い、次の制作に繋げていかなくては、と思っています。

 自分が考える絵のこと、空間や距離のこと、そして自分自身を取り巻くさまざまなこと、そのときどきの自分が絵には残っていて、一点一点の絵はもちろんですが、それぞれの絵に残る私自身の変遷そのものがひとつの表現になっていくことを願っています。これから自分が何を見、感じ、絵に残していくのか。何より自分自身が見続けていきたいと思っています」

自宅のアトリエから徒歩数分。多くの作品のモチーフになった樹がある神社で。