アメリカと歴史的な国交回復を果たしたことでも近年、話題のキューバ。しかし、私たちがキューバと聞いて思い浮かぶのは、葉巻、ラム酒、ラテン音楽、そして社会主義国家、くらいかもしれない。そんな“遠い国”を、アートジャーナリストの住吉智恵さんが現地取材。日本の裏側で目にした風景、人々の暮らし、そしてアートとは?

キューバが問いかける「豊かさ」の本質

ハバナ市民が暮らす路地では、このように路上にテーブルを出してゲームに熱中する男性たちをよく見かける。撮影していると、少年が寄ってきてポーズをとった。
[画像のクリックで拡大表示]

 この4月、キューバを初めて訪れた。日本人のキューバ移住120周年を記念する今年、首都ハバナで開催された文化交流事業の取材に赴いたのだ。そのひとつが、キューバと日本の現代に生きるアーティストを紹介する展覧会(本展はちょうど6月に東京で帰国展が開催されるので、ぜひご覧いただきたい)。

 本展のテーマはずばり「距離」だ。キューバ・日本間の渡航に丸一日かかる距離はもちろん、文化的・社会的な違いとそこから生じる距離感をベースに、さまざまな物事にまつわる近さ・遠さとは何かを問う。日本からは、昨年のヴェネツィア・ビエンナーレで日本代表を務めた岩崎貴宏や、社会実験的な問題作を発表し続けている高嶺格、ロンドンのカムデンアートセンターでの個展などを控え、いまや国内外で最も注目される若手作家となった毛利悠子ら7名が参加した。

 現地調査、制作設置の二度にわたる渡航の成果はいずれの作家も予想以上に安定したクオリティだったが、それは予想以上の難産を乗り越えてのことだったという。彼らが普段行う創作活動からギュッと凝縮されたエッセンスを抽出したのが、キューバでの展示だった。もちろんその理由のひとつは、社会主義国であるキューバの政治と社会制度にある。