世界中で愛され続けている絵本『ピーターラビットのおはなし』は、英国の絵本作家のビアトリクス・ポターによって生まれた。 イギリスの湖水地方の美しい自然を愛し、畜産家として、また自然保護活動家としても活躍したビアトリクスの波乱に富んだ人生を〈前編〉と〈後編〉の2回に分けてたどる。

ビアトリクス・ポターの愛したものと遺したもの

(写真左)1902年にフレデリック・ウォーン社から出版された絵本『ピーターラビットのおはなし』。初版8000部はすぐに完売。翌年末までに5万部が売れ、大成功の一歩を収めた。 (写真右)ビアトリクスは毎年復活祭にニア・ソーリーの村の子どもたちのため、イースターエッグの絵付けをしていた。ポートレートは1913年撮影のもの。

 ピーターラビットの生みの親のビアトリクス・ポターについて語ろうとするとき、そこには意外なほど、彼女の波乱万丈の生涯があったことに気づく。1866年にロンドンのケンジントンのボルトン・ガーデンズで生まれ、ヴィクトリア時代の、裕福な家庭の子女の例に漏れず、彼女は学校には行かず、自宅で家庭教師に勉強や美術を習い、友達のいない孤独な時間を過ごしていた。唯一、5歳下の弟のバートラムとは気が合い、ふたりはペットの動物を飼って観察したり、スケッチすることを楽しみにしていた。

(写真左)ビアトリクスは、1894年8月の休日に、スコットランドの森で20種類以上のキノコを発見して驚愕し、写生。以降キノコの研究に没頭するようになり、膨大な水彩画を描いた。 (写真右)没後の1996年、フランスの出版社よりビアトリクス450点に及ぶ水彩画を掲載した本『Les Champignons(キノコ)』が刊行された。