シャネルのグローバル クリエイティブ メークアップ&カラー デザイナーであるルチア・ピカにスペシャルインタビュー。就任以来、口紅、アイシャドウ、リップグロスと次々と大ヒットを飛ばす気鋭のクリエイターの、シャネル、そしてシャネルのメイクアップ製品についての思いとは?

 メイクアップというものに惹かれ始めたのは、9歳か10歳の頃。よく遊びに行っていたお隣の家の引き出しに、口紅やらアイシャドウやら、それはたくさんのメイク道具が収められていたんですよ。私にとってその引き出しは、ほかのどんなおもちゃよりも魅惑的な、宝の箱でした。こっそり拝借しては、バスルームに閉じこもって自分の顔に色を試し、そっと元に戻していたんです。まったく気付かれていないと思っていましたが、大人になったある日、「天職につけてよかったわね! 子どもの頃、しょっちゅう遊んでいたものね」と言われた時は、本当にびっくりしました(笑)。

 当初はイタリアの大学でアートを学ぶつもりでしたが、ファッションやビューティ関係の仕事をしたいと思い、ロンドンに移り住むことを決意します。欧州ファッションの中心といえば、ミラノ、パリ、ロンドン。ナポリ出身の私は、どこか違う国で、新しい人、言葉、文化に触れ、自分の世界を広げたいという渇望が強くありました。ロンドンでメイクアップのコースを専攻後、映画や音楽系のメイクの仕事もしましたが、やはりファッション関連のメイクが最も自分のやりたいことだと実感。そこでまず、その道の第一線で活躍するメイクアップアーティストをリストアップし、トップに名前を書いたシャーロット・ティルブリーのエージェントを調べ、アシスタント希望を伝える電話をしたのです。

 まだ22歳だった自分は、やる気満々で、そして何よりもピュアだったのだと思います。エージェントから「今忙しいので2週間後に電話をもらえる?」と言われ、それから1年間、2週間ごとに電話をかけ続けました。今なら、通常それは断りの言葉だとわかりますが、当時は希望にあふれていたんですね。意図したわけではないにせよ、諦めなかったことが功を奏したのか、ついにシャーロットのアシスタントに就くことができたのです。

 彼女のアシスタントの仕事は、一言で表すと“3年間×毎日24時間のスーパー集中メイクアップレッスン”という感じ(笑)。ハードだったけれど、超一流の撮影やファッションショー、そこに関わるクリエイティブな人々の仕事を見ることができ、得たものはまさにプライスレス、自分の糧(かて)となるものでした。

 独立して8、9年経った頃、ビューティ・キャンペーンを手がけたことが縁で、シャネルのグローバル クリエイティブメークアップ&カラー デザイナーを務めないかというお話をいただきました。もちろんそのためには、面接があったり、コレクションをつくるトライアルがあったりと、さまざまなプロセスがありましたが、契約書にサインをしたときは本当に“ワォ! すごい、どうしよう”という気持ちでした。その夜は、友達とパブでお祝いしたんです・・・・・・てもロンドンっ子っぽいでしょう?(笑)。

 2016年秋のデビューコレクションは、大好きな色「赤」がテーマでした。赤いアイシャドウや口紅が日本で大ヒットしたと聞いて、とても嬉しかったんです。実は正直、日本女性にはそれほど受け入れられるとは思っていなかったんですよ。でも考えてみたら、私にとって日本は赤のイメージ。芸者メイクだけでなく、着物にも多用されているし、文化的に根付いている色な気がします。だからこそクラシックとモダンの融合となり、好評を博したのかなと思いました。

 3月から新しいルージュ ココ グロスが発売されますが、色は全部でたっぷり27色です。たくさんの色を作った理由は・・・・・・女性はいつだって、くるくると変身したいものでしょう? 日本女性には、#742のフラゴラや#756のチリ、#728のローズ ピュルプなどの、ピンクや赤系が似合うと思います。私自身はダークカラー好きなので、フラゴラ、それに#768のデカダンがお気に入り。そして5月発売予定のクルーズコレクションは、ヴァカンスを意識した、よりリラックス感のある、シンプルに使える内容となっています。例 えば、目もとはラインとマスカラだけ、唇にはほんのり色をのせるけれど、全体にとてもクリアな印象──なんていうのは、日本女性にぴったりだと思いますね。

 これから始めたいことは・・・・・・早起きです。朝早く起きれば、時間をより有効に使えるし、瞑想をするのが好きなので、早く起きたいの。問題は、早く起きたいという気持ちと同じくらい、眠るのが大好きで、いつまでも寝ていたいと思うことかしら(笑)。

ルチアの最新のクリエイションはまぶたに溶け込むセカンドスキン感覚の「オンブル プルミエール」。単色でも、何色かを重ねても美しい、宝石のようなモノ アイシャドウ。柔らかなパウダリーの「オンブル プルミエール プードゥル(全14色 各¥3,900)」と、なめらかなクリームタイプの「オンブル プルミエール クレーム(全7色 各¥3,900)」が揃う(7月14日発売)/シャネル
Lucia Pica
メイクアップアーティスト、シャネル グローバル クリエイティブ メークアップ& カラー デザイナー
英・米・仏版『VOGUE』などの雑誌や、ファッションショーのメイクアップを手がけるなど、グローバルに活躍。その実績を認められ、2014年よりシャネルでの活動をスタート。美しく、華やかな色使いに定評がある。

Interview & Text: Mamiko Izutsu
Edit: Aya Aso
Photos:すべてCHANEL

(etRouge 2017年3月号より)

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