「SAYS FARM」と地元氷見の街は、新鮮な食材の宝庫

 「SAY FARM」の敷地内にあるニワトリ小屋から夜明けとともに響きわたる“コケコッコー”の声と、周辺の森から聞こえる無数の野鳥のさえずりは、まさに天然の目覚まし時計。普段は目覚まし時計のアラームでやっと目が覚めるという人でも起きられ、二度寝しようと思わぬほど。いつもより早い時間に起床したなら、「ニワトリ小屋のボックスから、産み落とされたばかりの卵を取ってきて朝食にしては?」というレストランのシェフの提案に合わせて、早朝の散歩に繰り出すのも手。朝露に濡れて濃く⾹る緑を感じながら歩くひと時は、都会ではなかなか感じることができない貴重な時間になる。

 朝食後の過ごし方も、天候次第でさまざま。お天気に恵まれたら金沢方面や世界遺産の白川郷まで足を延ばしては? 雨なら読書に耽るなり、ワインを楽しむなど、スケジューリングという言葉を忘れて、思うままに時間を過ごせるのが、ここならではの魅力だ。

 ただし、夕食に新鮮な魚を食べたい人は、午前中に氷見の街で買い出しをすることをおすすめする。訪ねるべきは、人気の「與⼀郎鮮⿂店」。赤鯛、⿊鯛、的鯛、ヒラメ、スルメイカなど、その日獲れた鮮魚がズラリと並んでいる。冬場は名物のブリをしゃぶしゃぶにして食する人が多いようだが、何を買うか迷ったら気さくな女将に相談を。魚選びや食べ方などをアドバイスしてくれるほか、その場で魚をさばいてもくれる。

 自炊したくない人には、甘みがある氷見米と旬の魚を熟知している寿司屋「すしやの城光」のテイクアウトがおすすめ。⾦沢で修業した地元出⾝のご主⼈が夫婦で経営している店で、電話予約で対応してくれるので、「SAYS FARM」で寿司パーティも夢ではない。

 またパン好きにおすすめの店は、農道沿いにある氷見米を使用した米パンを取り扱う「パン⼯房粒々」。母娘で営んでいる店のインテリアは娘の手づくりで、古い家具や雑貨、さまざまなボタンが貼り付けられた壁にほっこりさせられる。

地産地消の上に成り立っている、人間本来の暮らしに思いを馳せて

 時間が許すなら、氷見漁港の場外市場も兼ねた道の駅「ひみ番屋街」に足をのばすのもいい。鮮魚が味わえる専⾨店や飲⾷店が軒を連ね、北アルプス連峰の雪解け⽔が深海1000メートルに注ぎ込み、天然の⽣け簀ともいわれる富⼭湾の恵みの奥深さをあらためて感じることができる。また、地元農家による朝採れ新鮮野菜を入手できる店もある。

 さらに「SAYS FARM」を⼿がけた⽼舗⿂商「釣屋⿂問屋」による海の保存⾷のブランド「つりや」もある。昆布の消費量⽇本⼀を誇る富⼭伝統の料理法である昆布締めは、地元の⾁屋を覗けば氷⾒⽜の昆布締めもあるほどポピュラーだが、「つりや」は、程よい薄さに切り分けた新鮮な季節の⿂を薄く酢を塗った北海道の羅⾅昆布で包んで締めているのが特徴。⾷材へのこだわりと丁寧な製法が売りで、⼟地の恵みと⼈の知恵の交歓は、そのまま「SAYS FARM」にも通じる志といえる。

 2泊目の夕方を迎える頃になると、初日よりも体が風土に溶け込んでいる感覚を得られるはず。都会暮らしに身を委ねて忘れかけていた、人間が生活していく上で欠かせない土地の恵みと包容力。それがあってこその暮らしに思いいたらせてくれる「SAYS FARM」は、普段とは違う環境に身をおける、もうひとつの故郷のような場所かもしれない。

SAYS FARM
富山県氷見市余川字北山238
TEL: 0766-72-8288
料金:2名1室利用/平日¥32,200から ※1日1組、3室6名まで対応

Photos: Masahiro Ohashi Edit&Text: Yuka Okada

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