伝統⼯芸×デザインのパイオニアとして、鋳物に触れる接点を拡⼤

 富山県高岡市が町の主要産業として鋳物の製造を開始したのは、1611年に加賀藩主の前⽥利⻑が7人の鋳物師を招いたことに始まる。その後、時代の変遷とともに「高岡銅器」と称される銅合金鋳物の産地として発展。その流れのなかで、1916年に「能作」は創業し、鋳物メーカーとして、「鋳造」の技法を用いて仏具や茶道具、花器を製造してきた。

 2000年以降は国内のインテリアブームとともに台頭してきたデザイナーたちと、日常で使えるさまざまな雑貨やテーブルウェアなども製作。「伝統工芸×デザイナー」という取り組みは今でこそ珍しくないが、その先駆けとして「能作」の技術とモダンなデザインが市場に受けいれられていくきっかけになった。

 2009年の日本橋三越本店への出店を皮切りに、全国の百貨店を中心に直営店を展開。海外でも高く評価され、2017年2月にはニューヨークのSOHOにアンテナショップを共同出店。さらに同月バンコクの伊勢丹にも直営店をオープンした。また、グルメ界に君臨するフランス⼈シェフ、アラン・デュカスの店でテーブルウェアが採用されて話題になるなど、いまでは20カ国と取引するまでに成長。国内外でタッチポイントを増やし続けている。

日本の伝統工芸界初の「誰もが知るブランド」になるための挑戦

 地元の小学生も社会科見学で訪れる「能作」は、2017年4月に「産業観光」をコンセプトにした新社屋と新工場を竣工。オープン1カ月で約12,000人が来場したと、注目を集めている。場所は、北陸新幹線の新高岡駅から車で15分程度。約4000坪の敷地内には直営ショップのほか、地元の食材を「能作」の器で味わえるカフェや鋳物製作が体験できる工房などを併設。また、独自に編集した観光案内もある。

 建物もユニークで、エントランスホールには「能作」の歴史を物語る大量の木型が収容されたガラス張りの保管庫を設置。建物のディテールのあちこちに、「錫(すず)」「真鍮(しんちゅう)」「青銅」という、「能作」の製品にも使われている代表的な金属素材があしらわれ、鋳物メーカーということを密かにアピールしている。

 経産省によると、特定の産地に基づいて日本の伝統工芸品に指定されているものは255点にのぼるという。果たして、そのなかですぐに頭に思い浮かぶブランドはいくつあるだろう。海外の職人をうならせる腕があるにもかかわらず、伝統工芸に関するビジネスでは後れている日本。工芸品そのものだけではなく、職人の技術、そして富山県・高岡の地域の魅力まで伝える新社屋を「能作」が完成させたことは、より多くの人に知られるブランドになるための挑戦のひとつといえる。

 受け継がれてきた⾼度な技術を次の時代に継承することは、いまの⽇本ではすべての分野で最重要ミッションだ。伝統⼯芸の世界でも、かつて「能作」が手がけていた「各産地×国内外のデザイナー」という図式が増え続けている。この図式は決して⼀過性の話題づくりであってはならないし、継続的な取り組みでなければならない。そういう意味で「能作」のここまでとこれからのありようは、私たちが多くの伝統⼯芸に触れる際の、ひとつの指針になるのではないだろうか。

株式会社 能作
富山県高岡市オフィスパーク8-1
TEL:0766-63-5080、0766-63-0001(見学、体験の予約受付&お問い合わせ)
営:10:00〜18:00(工場見学は9:30〜17:00)
休:年末年始(工場見学は日曜と祝祭日は休業*土曜は月により休業日に変更あり)

Photos:Masahiro Ohashi Edit&Text:Yuka Okada