日常に寄り添うだけでなく、祝福と賞賛のシンボルでもあるシャンパン

 ワイン専門ショップのみならず、酒販店や量販店で日常的に購入でき、国内外の多くのレストランのシャンパンリストに名を連ねる「モエ・エ・シャンドン」。私たちにとっても親しみ深く、業界で世界シェアNo.1を誇るシャンパンのトップ・ブランドだ。

 その歴史は、フランス・シャンパーニュ地⽅の名⾨モエ家の⼀員であるワイン商、クロード・モエが、1743年にエペルネの町にメゾンを設立したことから始まる。商才のあるクロードは「シャンパンをワインの中で最高の地位に、そしてモエ・エ・シャンドンを最⾼のシャンパンに」という壮⼤な⽬標を掲げ、わずか5年後の1748年にはフランス王室の公式シャンパンに選ばれた。当時のフランス王ルイ15世や、彼の愛妾で多くの芸術家と交流した才⼥ポンパドゥール夫⼈に愛好されたことで、ヴェルサイユ宮殿の王侯貴族にも広まり、社交界にふさわしいシャンパンとしての地位を確⽴していく。

 クロードの孫で、その信念を継いだ3代⽬のジャン・レミー・モエは、「モエ・エ・シャンドン」をさらに世界に広めるため、それまで⾏っていた他のワインの製造を中⽌し、シャンパン造りのみに注⼒。この⼤胆な決断の結果、メゾンは英国王室御⽤達のお墨付きを得るに至り、その功績に⽬を留めた皇帝ナポレオンも戦勝酒として⽤いるようになった。その後、各国王家の戴冠式や各種式典でも振る舞われるようになった「モエ・エ・シャンドン」のシャンパンは、祝福や賞賛のシンボルとして、⼈⽣のセレブレーションの場に⽋かせないドリンクとして愛飲されてきた。

 創業から270年以上たった今でも、世界中で愛されている「モエ・ド・シャンドン」のシャンパン。仕事やプライベートでフランスを訪れる機会のあるNikkeiLUXE読者なら、さらなる背景に触れるべく、本拠地エペルネにあるメゾンにも⾜を運んでほしい。

「大は小を兼ねる」からこそ可能になった、多様なシャンパン造り

 「モエ・エ・シャンドン」最寄りのエペルネ駅までは、パリの東駅から普通電⾞で約1時間半。グループでの旅なら、思い切って⾞を借りてもいいだろう。エペルネ駅から徒歩5分にそびえる白亜の建物を訪れたら、ぜひ参加したいのが、石灰岩の地盤を地下10〜30m掘ったシャンパーニュ地方最大、全長28kmのワイン貯蔵庫、カーヴを巡るツアーだ。

 「モエ・エ・シャンドン」のシャンパンは伝統として、芳醇なシャルドネと力強いピノ・ノワール、独自の豊かさがあるムニエの3種類がブレンドされ、その配合は毎年、選び抜かれた10人のエリート醸造家が担当している。ツアーにはシャンパンのテイスティングも付いていて、ナポレオンとメゾンの友好関係の証しから名付けられた、3年熟成が基本のアイコニックな「モエ・エ・シャンドン モエ アンペリアル」をはじめ、良質なブドウの収穫年にだけ造られ、7年という⻑期熟成を経て出荷される「モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ コレクション」など、多様なシャンパンの飲み比べができる。

 そんなシャンパン造りにおける多様性を可能にしているのは、「モエ・エ・シャンドン」が1190ヘクタールの⾃社畑を所有する地主であるからこそだ。画家にたとえるなら、数々の絵の具があることで絵画の可能性が広がるように、「モエ・エ・シャンドン」は「Bigger is better(⼤は⼩を兼ねる)」という揺るぎない姿勢を体現している。

 シャパン造りに⽤いられる⾃社の畑のブドウは全体の1/4で、残りの3/4は特級畑のブドウや、古くからの契約農家のブドウを使⽤。⼟地の信頼関係を受け継ぎ、地域のスタッフを雇⽤してきた実績は、華やかなシャンパンメゾンのイメージの一方で、サステイナブルな企業としての真摯な姿が見える。

モエ・エ・シャンドン/MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社
TEL:03-5217-9906

Photos:Yuji Komatsu Text:NikkeiLUXE Edit:Yuka Okada

後編