随所で感じる「和魂漢才」による、調和の取れた心地よさ

 「都心の中でもあえて喧騒から離れた、静かな場所にあるレストランというのが、私と川田の思いを表現するのに最適だと思い、この場所にインスピレーションを感じ即決しました」とオーナー/支配人の林 亮治氏。かつてはある国の大使公邸として使われていた一軒家は、新しさをもちながらも、歴史の深さを内包し、調和のとれた心地よい空間として改装された。趣ある竹を横に見て、扉を開けると、まず目に飛び込んでくるのが優美な鉄瓶だ。「初めて見たときに、中国で作られた歴史あるもののように感じましたが、実は日本で釜師の喜多庄兵衛さんが手がけた作品でした。古きよき中国を現代の日本で表現していることが、自分が目指す料理の在り方と同じだと感じ、店に飾りたいと思いました」と話すのは、川田氏。語り口は穏やかで優しいが、その奥に強い信念を秘めている。

 川田氏の料理人としての道は、西麻布の中国料理店「麻布長江」(現「麻布長江 香福筳(こうふくえん)」)から始まる。そこで出会ったのが、現在共に働くオーナー/支配人の林 亮治氏だ。丁寧な仕事をモットーに10年間研鑽を積むと、六本木の「日本料理 龍吟」へと移る。そこには、日本という場所で料理をする以上、日本の食材や日本料理をきちんと理解しなければいけないという強い思いがあった。その経験によって、中国料理では経験できない緻密な食材の扱いや炭火焼きの技法を学ぶことに。現在、「茶禅華」のメイン料理にあたる肉料理と魚料理は、炭火焼きによるものが基本だ。

緻密で手を掛ける料理同様、細やかなサービスで国内外のゲストを迎える

 川田氏の教理は、なんとも潔い。余計な装飾を施すことなく、静かな佇まいでありながら、口に運ぶと力強さが隠れていることに気づく。その力強さとは、料理人が素材と真摯に対話をして導かれるものだ。例えば「雉の極上スープ 雲呑添え」は、清く澄んだ姿からは想像し難いが、味の決め手は血の旨み。雉のガラを血ごと水出しして丁寧に灰汁をとり濾すことで完成するスープは、全工程で3~4日を要する。中華の上湯と和食の一番出汁のいいとこどりをしたような味わいで、まさに絶品。小さなサイズの雲吞にも滋味が詰まっている。食材との対話から生まれる潔さと力強さが宿る料理に、ひと皿ごとに息を呑むばかり。真味只是淡、真の味は淡に宿るという、川田氏が大切にする概念だ。

 コースは、およそ15品で懐石料理を思わせる少量多種の構成。ドリンクは、ワイン、日本酒、紹興酒などによるアルコールペアリング(¥8,000~)のほか、ティーペアリング(¥6,000~)も「茶禅華」を語るうえで欠かすことができない。川田氏は、18歳の時にお茶に目覚め、独学をスタート。現地にも度々足を運んだ。お店では、中国をはじめ、アジア各国のお茶を、考慮された温度で提供する。例えば、春巻きには、シャンパングラスに注いだスパークリングのお茶を合わせるなど、これまでのお茶の概念を覆してくれるに違いない。お酒とお茶をミックスしたペアリングも可能だ。

 さらに、スタッフが日本語、英語、フランス語、中国語の4カ国語に対応している点も、こちらの強み。海外からの大切なゲストをもてなす際も、行き届いた説明や対応を受けることができる。居心地のよさというのは、料理、空間、そして人、レストランを創り上げるすべての要素において調和がとれることによって生まれるのだ。“和魂漢才”という一貫したテーマによって成る「茶禅華」を訪れると、そう強く感じる。

 
茶禅華
東京都港区南麻布4-7-5
TEL:03-6874-0970
営:18:00~23:00 (L.O.21:00) 、土 12:00~15:30 (L.O.13:00)、18:00~23:00 (L.O.21:00)、日 12:00~16:30(L.O.14:00)
休:月、日曜夜

Photos:sono(bean) Text:Yui Togawa Edit:Yuka Okada

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