A魚谷さんは、どんなときに新しい発想が浮かぶのですか?

魚谷朝、犬の散歩をしているときやシャワーを浴びているとき、ゴルフをしているときも多いかな。思いついたら、忘れないようにすぐに書き留めます。寝ているときにハッと思いつくこともあるけれど、だいたいつまらない(笑)。

A年中無休、24時間営業ですね。

魚谷土日も関係なく。考えたアイディアは即、下書きに残します。何事も思ったらすぐにやりたいんです。ハンズオンで動けない役員に皆はついてきません。そもそも、社長も役員も偉いわけじゃなく、役割が異なるだけ。自ら動いて示さないと。

A昨年度の売り上げと利益が、過去最高を更新した理由がなんとなくわかりました。前の会社で培った経験も生きていますか?

魚谷ライオンのトイレタリービジネスで女性の購買行動に興味を持ち、ファッション誌も読んでいました。コカ・コーラでは、ジョージアのCMに女優さんを起用したやすらぎキャンペーンを展開。缶コーヒーにサラリーマンを応援する、という付加価値をつけました。そんな社会的価値を見出す、といった意味では同じだと思います。

日本の成熟した美意識、文化的価値を世界に発信。

A資生堂ブランドの魅力は?

魚谷なにより、文化の発信地である銀座で生まれた日本のシンボリックな企業、というアイデンティティです。でも実は、西洋式の調剤薬局やレストランを始めるなど、根底にはウエストミーツイーストの発想が。私も奈良に生まれ、日本のシンボリックな歴史観の中で育ったので、哲学や感性には相通じるものがある気がします。

A海外で過ごしたり、欧米の方と仕事をしたりする中で、逆に日本的な意識に目覚めることもありますよね? 資生堂がグローバル企業として、さらに進化するためのヒントもそのあたりにありそうです。

魚谷まずは、長い歴史の中で培われた、世界に通用する文化的な価値を皆で共有すること。安全で、自然や四季とも調和して、心地よくて。ここまでこまやかに成熟している国はほかにないでしょう? その価値の発信源になり得るのですから、我々は発信能力をもっと高めなければなりません。そこで大事になるのが、相互理解ができる話の仕方、コミュニケーション。海外の社員が資生堂のバリューを理解し、志を同じくすることから真のグローバル化が始まると思っています。

A最後に、美容は面白い?

魚谷興味深いのは、国によって意味や意識が違うこと。アメリカの女性にとってはコンフィデンスでエネルギー。日本の女性にとっては、エチケットであり、健康ともリンクしている。欧州ではビューティといえばフレグランスで、自己表現です。機能性だけじゃなく、感性にも訴えかける化粧品は、社会的なメッセージや価値をつくれるビジネスであり、世界を変えられるポテンシャルを持っていると信じています。

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新生SHISEIDOの象徴。「強い」美しさを養う美容液。
「資生堂というブランドの価値をグローバルに発信する、マーケティング改革の第1弾。社長就任後、2014年に発売したので思い入れも」。環境の変化やストレスに負けない「強さ」を育む、世界で13秒に1本売れている美容液。そんな大ヒット製品が、6月にパワーアップ。SHISEIDO アルティミューン パワライジング コンセントレート N 50ml ¥12,000(6月1日発売)/資生堂インターナショナル
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不可能を可能にしたアネッサ。この製品力は日本ならでは。
「誰でも買えるマスの商品に、女性が日焼け止めに求めるニーズをすべて叶える、きめ細かな技術を集結」。汗や水に濡れるとUVカット効果がさらに強くなる最新のテクノロジーを搭載、またダメージや乾燥を防ぐスキンケア成分を約50%配合。柑橘系の香りで全身に使え、石けんでオフできる。アネッサ パーフェクトUV スキンケアミルク SPF50+/PA++++ 60ml ¥3,000 (編集部調べ)/資生堂
Masahiko Uotani
株式会社資生堂 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO
Masahiko Uotani 1954年6月2日奈良県生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業後、ライオンに入社。83年には米国コロンビア大学経営大学院に留学し、MBAを取得。94年に日本コカ・コーラに入社し、2001年に代表取締役社長就任。その後、さまざまな企業の顧問や社外取締役などを経て、2014年より資生堂代表取締役 執行役員社長 兼 CEOに。

Photos: Kiyohide Hori Text: Eri Kataoka Edit: Aya Aso

(『etRouge』2018年5月号より)

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