白金台こばやし
渾身のお椀の主役は、儚く繊細な牡蠣しんじょう

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牡蠣しんじょうのお椀。柚子、金時人参、壬生菜とともに。出汁は、香りのいい鰹と旨みのある鮪を7:3の割合で使用している。縁起のいい鶴を描いたお椀で。

「普段は牡蠣が苦手な方でも、抵抗なく召し上がっていただけるお椀です」と話すのは、店主の小林和道さん。鱧(はも)のすり身と卵白を合わせた牡蠣しんじょうは、まるでスポンジケーキのようにふわりとした儚(はかな)い口当たり。刻んだ貝柱が心地よい食感のアクセントになっている。ほんのりと緑がかった色は、牡蠣のワタをつぶしているため。非常に優しく繊細な印象でありながら、牡蠣特有の旨みをしっかりと感じることができる逸品だ。

 使用している北海道サロマ湖産の阿修羅牡蠣は、比較的小粒だがクセがなく、香りと旨みがギュッと詰まっている。ほかに、長崎県の小長井産、兵庫県の坂越(さこし)産も使用。いずれも、しっかりと旨みがあるが、洗練された風味が特徴だ。牡蠣しんじょうのお椀は、オープン当初から作り続けている人気のメニュー。牡蠣同様にしっかりとした味わいのハマグリも、旬には同様の仕立てで提供している。

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香ばしく揚げた牡蠣フライの手巻き鮨。おまかせコース¥15,000からの一例。内容は食材の仕入れによって替わるので、予約時に確認を。

 手のひらサイズのこちらは、粗めのパン粉をまぶしてカラッと揚げた牡蠣を、黒酢の酢飯で握ったユニークな品。穴子からとった出汁を煮詰めたとろりとしたツメを添えている。有明産の磯の香り豊かな海苔で巻いていただく。揚げ物と聞くと、パンチがあるように思うかもしれないが非常に軽やかで、口に入れるとそれぞれの風味が一体になり、絶妙なバランスとなる。

 料理はおまかせコース一本。季節の移ろいを皿の上に投影した優美な品々でゲストを魅了している。献立は先付から始まり、八寸、お椀、お造り、焼き物、変わり鉢、煮物、土鍋ご飯、甘味という流れで月替わり。牡蠣フライの手巻きが、お造りの後に登場するなど、柔軟に構成されたコースでゲストをもてなす。一品一品が非常に手を掛けた料理で、なかでも八寸は、その秀逸さに驚かされる。お酒好きなら、八寸だけで延々と飲んでいられそうな充実ぶりなので、ぜひ、楽しみに訪れていただきたい。