ライフスタイルを豊かに彩るラグジュアリーブランドのCEOたちの生き方、価値観に触れるインタビュー連載。今回は、世界的に名を馳せるプレステージ シャンパーニュ メゾン「クリュッグ」を率いるパワフルで魅力的なCEO、マギー・エンリケスさんに話を聞いた。

一切の妥協なく選び抜かれたシャンパーニュ

 ココ・シャネルやヘミングウェイ、マリア・カラスをも魅了した、“シャンパーニュの帝王”クリュッグ。そのルーツは、ドイツ移民のヨーゼフ・クリュッグ氏が創業した1843年に遡り、独自のアッサンブラージュ(ブレンド)によるシャンパーニュ造りは、6代目のオリヴィエ・クリュッグ氏が当主を務める現在まで、代々一族に継承されてきた。1999年からはLVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)グループの傘下となるものの、伝統的な製法は創業当時のまま。むしろ、ミステリーに包まれていたその手法を明かすことで、あらためてメゾンの偉大さを世に知らしめた。その立役者となったのが、2009年からCEOとしてメゾンを率いる、マギー・エンリケスさんだ。

「就任した最初の1年は、バッドイヤーだったわ。私はアプローチを間違えてしまったの。一般消費財と異なり、ラグジュアリーブランドは創業者の信念こそが本質。それを理解するために、翌年からは時間と愛情をかけて徹底的にクリュッグの仕事と歴史に向き合ったのです」

 2010年、マギーさんはクリュッグの最高醸造責任者エリック・ルベル氏とともに契約農家を訪問し、ワインのテイスティングとぶどうの買い付けに参加した。そこで目にしたのは、畑の区画ごとに吟味し、最高の出来以外は買わないという断固たるメゾンの姿勢だった。

「区画単位でぶどうの品質や個性を追求し、さまざまな年ごとに仕込んでアッサンブラージュするのが、クリュッグのグランド・キュヴェ。1本のボトルの中に選ばれるぶどうにはどれひとつとして妥協がないのだと、身をもって知った瞬間でした」とマギーさん。目の前の「クリュッグ グランド・キュヴェ」のボトルを愛おしそうに撫でながら、「あのときの驚きと感動は、昨日のことのように覚えているわ」と目を細めた。