理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

互いに切磋琢磨しながらシャンパーニュ造りに挑む、若手のスター兄弟

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リュード村のプルミエ・クリュ、ル・クランの畑にて、ヴァンサンさんと。

 みなさん、こんにちは。「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第18回の訪問先は、シャンパーニュ地方のランスから南東へ車で20分ほど、モンターニュ・ド・ランス地区のル・クラオン・ド・リュード村に位置する「ベレッシュ・エ・フィス」です。1847年より続くこのドメーヌは現在で5世代目。5代目は、ラファエルとヴァンサン、二人の兄弟で担っています。彼らはシャンパーニュ好きの中では知らない人はいないというぐらい、若手のスター兄弟として有名です。今回はロングヘアがトレードマークの、弟のヴァンサン・ベレッシュさんにお話を伺いました。

明日香:ヴァンサンさん、こんにちは。この青空に冬枯れのブドウ畑って本当に美しいですね。なんだか凛とした気持ちになります。この土壌には白っぽい、明らかにチョークとわかる部分がありますね。

ヴァンサン:私たちがいるこの場所は、リュード(Lude)村のル・クラン(Le Cran)というプルミエ・クリュの畑で、ご指摘のとおり、石灰(チョーク)質土壌です。

明日香:ドメーヌは、現在どのぐらいの広さの畑があるのですか?

ヴァンサン:全体で約10haあって、そのうち3分の1がモンターニュ・ド・ランスに、もう3分の1はプティット・モンターニュ・ド・ランスに、残りの3分の1はヴァレ・ド・ラ・マルヌにあります。

明日香:それぞれのエリアで、どのブドウを植えていらっしゃるのですか?

ヴァンサン:ヴァレ・ド・ラ・マルヌでは、ムニエとシャルドネです。ほかのエリアでは、シャルドネとピノ・ノワールを植えています。

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気さくなヴァンサンさん。冗談をまじえながら、剪定の話などを細かく説明中。

明日香:なるほど。シャルドネとピノ・ノワール、ムニエの割合はどのくらいですか? あと、この畑に植えてあるブドウ樹は結構古いものだと思うのですが、平均樹齢はどれくらいになりますか?

ヴァンサン:3つのエリアでトータルすると、面白いことに、それぞれちょうど、3分の1ずつぐらいになるんですよ。今いる畑のこのあたりは1965年から、あちらのほうには1971年からブドウを植えています。ブドウ畑全体の平均でいえば、樹齢35年以上、おそらく40年くらいにはなるでしょうね。

明日香:ヴァンサンさんよりも年上の樹が多いですね。あの、ブドウ畑の先に植えてあるのはバラですか?

ヴァンサン:そうです。オイディウムというブドウ病害の有無を知るために植えています。とはいえ、今ではデジタルセンサーで病害のチェックをするのですが、かつてはバラの樹の様子がその役割を果たしていたんですよ。

明日香:オイディウムは、日本ではウドンコ病というのですが、若い枝やブドウの実が白い粉で覆われたようになるんですよね。この畑は既に、タイユ(剪定)を済ませていらっしゃるように見えますが……。