月経周期やストレスで気になるにおいが発生する。

 先ごろ、体臭に関する興味深い発表があったのをご存じだろうか。ストレスによって特有のにおいが発生する──「ストレス臭」を資生堂が特定したのだ。

 中世ヨーロッパでは、ペスト患者特有のにおいが忌避された。近年では、糖尿病の患者の呼気や体臭に、アセトン臭という甘酸っぱいにおいがあることが知られ、患者の呼気や血液、尿のにおいでがんを高い確率で嗅ぎ分ける「がん探知犬」も存在する。こういった、においと体の関係に注目したのが、資生堂アドバンストリサーチセンター研究員、勝山雅子さんだ。

 勝山さんは、手に袋をかぶせて採取した「皮膚ガス」を嗅いだ際、「緊張している人には特有のにおいがある」ことに気づいた。そこで、緊張ストレス状態を再現して皮膚ガスを採取する実験を行った。すると、交感神経が優位になり、唾液中のコルチゾール(通称ストレスホルモン)が増加している緊張時には、イオウ化合物の一種で、特徴的な臭気をもつ「STチオジメタン」が増加。さらに、この皮膚ガスを17人に嗅いでもらったところ、心理指標のうち「疲労」「混乱」のスコアが上昇したという。

「ストレス臭は、そのにおいを発する本人も、それを嗅いだ周囲の人にも心理的影響を与える可能性があります」と勝山さん。気になる報告だが、ストレス下でそんなにおいを発生させるのはなぜ?

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「加齢臭」に続き、資生堂が突き止めた「ストレス臭」の正体。
1999年、「加齢臭」の原因物質「ノネナール」を特定した資生堂が、新たにストレスが原因で発生するにおい成分「STチオジメタン」を特定。STチオジメタンとは、イオウ化合物の「ジメチルトリスルフィド」と「アリルメルカプタン」を主成分とするネギ臭に似た化合物。健康な女性40人(35~44歳)に対人ストレスや緊張という心理的ストレスを与えると、皮膚ガス中に発生することがわかった。「上のにおいは、運動時には発生せず、短期の心理ストレスにより生じる特有のにおいです」(資生堂アドバンストリサーチセンター勝山雅子さん)。正体がわかれば、対策が知りたくなるところ。資生堂はこの物質を特殊な化学成分で包み込み、においを感じにくくする技術を開発。商品化につなげるという。

「その理由は科学的にはわかっていません。現段階では推測であり、確認することは困難ですが、人と人とのコミュニケーションが、皮膚ガスやにおいを通じて行われている可能性があるなら、おもしろいと考えています」(勝山さん)

 議論の煮詰まった会議室やピリピリとした職場に、かすかなイオウ臭を感じたら、窓を開けて新鮮な空気を入れたり「お疲れさま!」とねぎらい合ったり…… そんな行為が希望ある対処といえそうだ。

 そして、におい治療を専門に行う五味クリニックの五味常明院長はこう話す。「若い女性に特有の体臭として、甘いピーチやココナッツのようなにおいが特定されています。しかし、このにおい成分は30代以降に減少。さらに更年期になると皮脂腺が酸化しやすくなり、そのため、皮脂腺と活性酸素により発生する過酸化脂質が結びついて発生する、ノネナール(加齢臭)が強めに出るようになります」。皮脂腺は油っぽい食事に偏ることによって増え、過酸化脂質はストレスによって発生する。そこで、「食事をバランスよく整える、ストレスを手放すといった『自分へのケア』こそ、適切なにおい対策といえるでしょう」とアドバイスする。