口臭は「強まるとき」を見極めてケアを。

 人と接近して話すとき、気になるのが口臭。日本口臭学会では、口臭を「生理的口臭」と「病的口臭」の2つに大きく分類している。まず、生理的口臭は、健康な人であってもしばしば生じるもので、起床時や空腹時、緊張時、ホルモン変調時に強まりやすい。一方、病的口臭は、歯茎などに炎症が起こって臭気が生じる「歯周病」や、細菌のすみかとなる

「舌苔(ぜったい)」がにおいの原因となる。中でも、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌(P.g.菌)は代表的な歯周病の原因菌。口腔内に悪臭をもたらすだけでなく、口腔内に付着する力が強く、毒素によって歯を支える骨を溶かす反応を促すなどかなりの威力を発揮する細菌だ。

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女性ホルモンの揺らぎは口臭リスクを高める。
排卵期、月経前、月経中は口臭が強くなる、と感じる人はいませんか? 21~31歳の5人の健康な女性を対象にした研究によると、月経周期と口臭、膣分泌物が代謝する乳酸など に、周期的な変動があることがわかった。中でも排卵期と月経前、月経中は、呼気中に硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルスルフィドという揮発性イオウ化合物の濃度が高くなり、口臭の強さに影響していた。グラフは被験者のうちの一人のもの。

 そして、先述の通り、女性の場合、月経周期と口臭の強さはリンクする(上グラフ)。ホルモンの変動による自律神経の変化、高体温期に唾液分泌量が低下することなどが理由とされている。また、1日を通じて口臭レベルが上下することも把握したい。唾液の分泌量は就寝中に減るため、起床時は最も口臭が強くなる。そして、毎回の食事は口臭レベルを下げるきっかけに(下グラフ)。

「口の中のタンパク質やアミノ酸を細菌が分解すると、硫化水素やメチルメルカプタンといったイオウ化合物が発生し、口臭となります」とは、第一三共ヘルスケア研究開発部開発第一グループの田中美希さん。ホルモン変動や生体リズムといった生体側の要因には抗いがたいが、心がけられることもある。それが、「唾液をしっかり分泌させることです」(田中さん)。

 唾液には、細菌の過剰な繁殖を防ぐはたらきをもつリゾチーム、ラクトフェリンなどの物質が含まれている。よく噛んで食事を摂ることで唾液の分泌が促され、口臭の原因となる口内のタンパク質を飲み込めるというわけだ。

 唾液は、更年期など女性ホルモンの低下や加齢、ストレスによって分泌が減る。これに加えて「噛まない、話さない、口を開けっ放し、という習慣も、唾液分泌を減少させます。その結果、口内を乾燥させ、口臭を強くしてしまうのです」(田中さん)。オフィスで黙々とパソコンに向かっている人は、ときどき周囲とおしゃべりを。舌をぐるぐる動かす“お口の体操”もおすすめだ。そして、よく噛んで食べることと朝食の大切さは言うまでもない。常に新鮮な唾液を出すことで、口腔内の健康を保ち、口臭を防ぐことができる。

 また、細菌は、夜のうちに口内のタンパク質を食べて増殖するので、寝る前にはフロスなども使って、丁寧に歯みがきを。細菌の繁殖を抑える成分を配合したオーラルケアアイテムも頼りになる。そして、セルフケアでは取り切れない歯石やプラークは、歯科でクリーニングを受ければ万全だ。

 自らをケアし、体も心も健康だと自負できれば、においはきっと気にならない。「におっているかも?」は、健康への違和感なのだ。だから、気にしすぎるなどもってのほか。においも丸ごと、私らしさ――堂々とそうありたい。

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唾液が減れば、口臭が強くなる。
唾液の分泌は、起床時から増え始め、就寝とともに減少するというふうに、活動と休息のリズムを刻む(右のグラフ)。一方、口臭の日内変動を調べた研究では、口臭のレベルは朝食前が最も高く、朝食後、昼食後といずれも「食後」に下がることがわかっている(左のグラフ)。朝もしっかり食事を摂って唾液の分泌を高めることは、口臭予防にもつながる。

Illustration:Asako Suzuki Text:Misao Yanamoto Editor:Yuko Sano