パリ在住の現代音楽作曲家、ヤコポ バボーニ スキリンジの写真展「Bodyscore-the soul signature」が、銀座のイベントスペース「シャネル・ネクサス・ホール」にて開催されている。ここでは彼自身のコメントとともに、その見どころをレポート。

作曲という聖域を整える「書」の身体性

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 パリを拠点とする現代音楽の作曲家であり、ビジュアルアーティストでもあるヤコポ バボーニ スキリンジの、日本では初の写真展が開催中だ。

 コントラストの強い黒と白を基調とする空間には、モデルの裸身にさまざまなポージングをつけたモノクロの肖像写真が展示されている。その多様な属性を持つモデルたちの肌に、スキリンジ自身の端正な筆使いで、びっしりと楽譜が書かれている。

 俗に「美しい音楽はその譜面さえも美しい」といわれる。幼少時より作曲を始めたスキリンジもまた、恩師から美しい譜面を書くように教えられ、西洋の書道であるカリグラフィーを学んだこともあるという。

 ところが近年、テクノロジーの発達により、記譜法の主流は手書きからコンピューターの音楽制作プログラムへと移行した。2007年、彼にとって2番目の弦楽四重奏を発表し、その演奏を聴いたとき、「まるで自分の作品ではないような感覚だった」とスキリンジは語る。

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「もちろん私自身ミレニアム世代ですから、ラップトップがあればちょっとした移動中に仕事ができることは便利です。しかし、書いては消し、上書きするという二進法で簡略化されたデジタルテクノロジーでは、創作過程の時間が歴史として蓄積されることはありません。消えて空っぽになると感じたのです」

 そこで彼が着目したのが、カリグラフィーに象徴される「書」の芸術性だった。人体に手書きで美しい楽譜を書くという実験的な記譜法を始めたことにより、身体というメディアを通じて「バイブレーションが私の手に戻ってきた」とスキリンジは言う。