『半沢直樹』『下町ロケット』『陸王』『花咲舞が黙ってない』などなど、著作が次々と映像化されるベストセラー作家、池井戸潤さん。最新作である映画『七つの会議』は、中堅電機メーカー「東京建電」を舞台にした社会派エンタテインメント。営業部きっての切れ者課長が、仕事嫌いの万年係長・八角にパワハラ告発されたことをきっかけに、浮き彫りになっていく会社の秘密を描くというストーリーだ。自分が働くのは、誰のためなのか。何のためなのか。池井戸作品を読むたびに考えさせられるその問いの答えとは。池井戸さんから返ってきた答えは、なんとも意外なものだった。

「歳時記」的な連載小説という、新たな試み

──『七つの会議』はどのような発想から生まれた作品ですか?

 この作品は新聞(日経電子版)連載だったのですが、そもそも僕自身、新聞の小説って読むのを途中でやめてしまうタイプなんです。連作短編の形にしたのは、そういう人が、たとえ一度脱落しても別の短編が始まればまた頭から読めるから。そういう形って今までなかったと思いまして、試しにやってみたいなと。内容としては、会社内の日常を淡々と描いていく歳時記のようなものを描くこと、会議を軸に成立する物語をつくること、それから当時の事務所の近くにあった蕎麦屋に入ったときに、隣に座ったサラリーマンが話していた「パワハラ」のエピソード……などなど、いろいろなアイディアが詰め込まれている感じです。

──連載では7つの短編だったものに、あとから1話書き足したとお聞きしました。

 1冊の本として出すときに、「最終議案」という最終話を書き足しました。作家としては必ずしも決着は必要ではないし、「文芸作品」としてはこれでいいという段階があります。『下町ロケット』でも、本当は最後の打ち上げの場面はなくてもいいんです。でも読者には最終的な決着を求める人が多いし、本という商品にするなら、そうでないと難しいんですよね。でもそうやって書き足したら会議が「七つ」じゃなくなってしまって(笑)。ですから「七つの会議」の「七つ」は、具体的な数字の「7」という意味ではなく、「七つの海」のような「たくさんの」という意味だと解釈していただきたいなと。


2011年5月から約1年間にわたって日経電子版で連載された7つの作品に、「第八話 最終議案」を加えて書籍化されたベストセラー作品の文庫版。池井戸さんが語る「映画との違い」を楽しみたい。『七つの会議』¥800/集英社