プレスプレビューでは、自身も1970〜80年代にロンドンのストリートで音楽シーンやユースカルチャーをとらえた写真家、ハービー山口氏がシンプルで的確な質問をホーヴァットに投げかけた。「どんな写真家が、よい写真家といえるのでしょう?」。すると、「被写体と人生や社会との関連性を引き出す写真家は、よい写真家であるといえるでしょう」とホーヴァットは答えた。

 彼がモデルたちと向き合うスタンスは、きわめてストイックだ。男性の写真家によくあるように、まず被写体と会話し(時にはそれ以上のことも)、親密さや信頼関係を構築しようとはしない。その代わり、想像したり、自分なりに解釈したりするのだという。

 本展のなかで、ひときわ寡黙で密やかな作品がある。それはファッションショーのバックステージからひっそりと舞台を見守るココ・シャネルの姿を撮影したものだ。ほとんど影になり、黒々としたそのシルエットには、無防備でありながら、全身に張り巡らされたテンションと誇りとがみなぎるようだ。

「彼女に話しかけはしませんでした。私はただ美しいエピソードをとらえたいだけなのです」とホーヴァットは語る。

 彼が焦点を当ててきた被写体のすべてが、その人生に固有のエピソードを抱えていることを想像させ、珠玉の短編集のように綴られた展覧会である。

フランク ホーヴァット写真展 Un moment d’une femme
会期:2月18日(日)まで 12:00~20:00 無休
会場:シャネル・ネクサス・ホール(東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
入場料:無料

Text: Chie Sumiyoshi Edit: Kaori Shimura

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