初めて、100%近く役にシンクロできた

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──そんな渚に、迅はどうしてひかれたんだと思いますか?

 映画には、迅と渚がまだティーンエイジャーだったころの出会いを描いたドラマ版があるのですが、そのころの渚って、やりたいことがはっきりしていて、自分の気持ちを正直に出せる人なんですよね。迅はそうなりたくてもなれない、自分の気持ちに正直になれないから、渚のそういう部分にひかれ、憧れたんだと思います。ちょっと言葉は悪いのですが、ほんとうに渚って、人としてどうかしてると思うんですよね(笑)。観客の方もそう思うと思いますが、見ているうちに変わっていくんじゃないかなとも思います。実のところ、不器用な人なんだなって。

──渚役の藤原季節さんとは、撮影中は合宿生活だったとか。どんな時間を過ごしていましたか?

 コテージに戻ったら役者同士に戻り、いろいろと相談し合いました。もちろん仕事以外のどうでもいい話もしたし、一緒にテレビを見たり、お酒を飲んだり、ご飯を食べたり。「迅と渚」のスイッチは、常にどこかで入ってはいるんですけど、フル稼働させたまま10日間以上過ごすと、心身ともに持たないんで。「オフ」にする時間もつくろうと心がけていましたね。

──「一人になりたい」とは思いませんでしたか?

 思わなかったですね、意外と。普段なら絶対に一人になりたいと思うのですが、迅を演じていたときは、一人になると不安になっちゃうんです。すごく孤独な役なので、誰かと一緒にいたいと思っていましたね。

──演じる上で何かプランのようなものはあったのでしょうか?

 今回はほぼ脚本の順に撮影できたので、プランというよりは自然に、気持ちの流れにそのまま乗ることができました。その場面をリアルに経験して感じたものを、ただ素直に出していくという感じでした。

──藤原さんと作り上げていった部分もありましたか?

 ほぼ全シーンについて、細かく話し合いましたね。ほんとうに小さな、たとえばスーパーで買い物する場面でも、普段の僕ならこうするけど、迅はどうするかな? みたいな話とか……。やっぱり自分が最初に思い描くものは、自分一人の経験や知識から出たものだから、他の人がどう思うか聞くのはすごく刺激になるんですよ。LGBTQについての知識や感じていることなども。コテージでの合宿生活は、それを共有する場だったと思います。