理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

専門家とともに土壌を第一に考える、新たなアプローチに挑戦

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ドメーヌ・スェナンの外観。

 みなさん、こんにちは。「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第19回では、シャンパーニュ地方のエペルネから南東に車で15分ほど、コート・デ・ブラン地区のグラン・クリュであるクラマン村に位置する「ドメーヌ・スェナン」を訪問しました。

 ここは、最近特に注目を集めるようになったドメーヌで、現在は「テール・エ・ヴァン・ド・シャンパーニュ」という、本連載でも過去にご紹介したアグラパール・エ・フィスやルネ・ジョフロワ、フランソワーズ・べデル、ベレッシュ・エ・フィスなどをはじめとする、今のシャンパーニュを牽引する注目の生産者たちが、互いに交流をもちながら切磋琢磨していくことを目的とした志の高いグループにも属しています。今回は、5代目当主のオレリアン・スェナンさんにお話を伺いました。

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〈左〉サロンの壁にはシャンパーニュの地図が広がっている。 〈右〉瓶の中で地層を再現し、説明してくれるのでわかりやすい。

明日香:こんにちは。私は最近特にスェナンさんのシャンパーニュにハマっていて、先週も東京でグラン・クリュ・オワリのマグナムを飲んだばかりです。今日お会いできるのを楽しみにしておりました! さっそくですが、ドメーヌの歴史を教えてください。

オレリアン:そう言ってくださって、とてもうれしいです。ではまず、ドメーヌの歴史についてお話ししますね!
 当ドメーヌは、ダムリー(Damery)村で1898年にブドウ栽培農家としてスタートし、2代目が結婚した際に、このクラマン(Cramant)村へ移ってきました。
 もともとはブドウ栽培のみを行っていた家だったのですが、3代目である私の祖父がワイン醸造も始めました。私の父が4代目で、彼は1990年代には畑を買い足すなどしてドメーヌをかなり拡大したのですが、2009年に残念ながら急に亡くなってしまいました。突然ではありましたが、私が2009年に5代目としてドメーヌを引き継いで、今日に至ります。

明日香:オレリアンさんは、お父さまのご逝去にともない急にドメーヌを継がれたということですが、それまでは家業についてどのように考えていらしたのでしょうか。