オレリアン:課題は常にあります。今、私が気にしているのは、それぞれの畑、それぞれの区画の特異性をちゃんと引き出して、その個性を生かした味わいのワインとシャンパーニュを造ることです。

明日香:先ほどからお話を聞いていて、オレリアンさんは何か始めるとなれば、まずはとことん!学び考えるタイプですね。その追求したい気質はよくわかります。

オレリアン:明日香さんはもともと理論物理学の研究者だったと聞きました。お互い、研究者気質なんでしょうね。

明日香:私も納得いくまで追求しちゃうタイプです(笑)。

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樽に打ち込んであるスェナンのロゴマーク。

明日香:(地下のカーヴにて)現在はいくつのキュヴェを造られているのですか。

オレリアン:シャルドネで5種、ムニエで1種のキュヴェを造っています。生産量としては、2012年からは大体22,000~23,000本です。ただ、2018年はとてもよい年だったので、28,000本と少し多めでした。

明日香:お父さまの時代とは、キュヴェも変わっていますね。

オレリアン:そうなんです。父とはまったく異なるアプローチで畑を捉えているので、現在は僕の代になってからの新しいキュヴェをリリースしています。

明日香:造りにおいての特徴はなんでしょうか?

オレリアン:まず、この蔵にいる自然酵母のみを用いてアルコール発酵をさせています。それと、すべての発酵において、マロラクティック発酵(ブドウそのものがもつリンゴ酸が乳酸菌の働きによって乳酸に変化する)を行っています。

明日香:樽やステンレスタンクでは、ワインはどれぐらい寝かせるのですか?

オレリアン:樽で9カ月、ステンレスではそれよりちょっと短い期間、熟成させています。また、大樽、小樽、卵形のコンクリートタンクなど、さまざまなもので熟成させて、それらをブレンドしたりもしています。

明日香:実験好きのオレリアンさんらしいですね!

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〈左〉地下のカーヴにてオレリアンさんと。 〈右〉古いシャンパーニュのストックも多数ある。

オレリアン:では、テイスティングをしましょう。まず最初は「オワリ ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ(OIRY Blanc de blancs Grand Cru)です。これは2015年がベースワインで、2013年、14年のリザーヴワインをブレンドしています。瓶詰めしたのが、2016年の7月18日と19日で、ドザージュは1ℓあたり2gです。

明日香:ここまで詳細に瓶詰めの日にちを教えてもらったのは初めてです(笑)。味わいは、酸とミネラルがしっかりあって、キリッとしていますね。本当にシャープでクリア。コート・デ・ブランのグラン・クリュのブラン・ド・ブランのなかでも、このクリアさは際立っていると思います。

オレリアン:その言葉、うれしいです。次は、先ほど畑でもお話しした「セ・プリュス・セ ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ(C+C Blanc de blancs Grand Cru)」です。これも最初のオワリと同じで2015年がベースワイン、瓶詰めの日にちも同じです(笑)。ただ、ドザージュは1ℓあたり4gとなっています。

明日香:オワリと比べると、少し果実味が豊かに感じますね。やはり、シュイイの土壌からもたらされるふくよかな味わいが表現されていると思います。

オレリアン:ありがとうございます。そのブドウの味わいが、シャンパーニュにちゃんと出てますよね。

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左から、「オワリ ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ」、「セ・プリュス・セ ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ」、「レ・ロバール クラマン ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ 2013」。

オレリアン:では、最後のキュヴェを。「レ・ロバール クラマン ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ 2013(LES ROBARTS cramant Blanc de blancs Grand Cru 2013)」です。これはクラマンのレ・ロバールという畑の2013年のブドウのみで造ったシャンパーニュで、このミレジメの生産本数は2782本です。

明日香:そんな稀少なシャンパーニュをありがとうございます! 味わいは、ちょっと鉄っぽいニュアンスを感じますね。これは、このリューディ(区画)の土壌に鉄が多く含まれているからなのでしょうか。

オレリアン:そのとおりです。ブラン・ド・ブランの味わいのなかにこの鉄っぽさが含まれていたら、テロワールをきちんと表現したことになるので、私としては、このミレジメのこのキュヴェは成功ですね。

明日香:なんだかやみつきになる味わいです。最後になりますが、オレリアンさんの今後の目標を教えてください。

オレリアン:今、隣にカーヴをもうひとつ造っているのですが、スペースが広くなることで醸造においていろいろと試したいことができるようになり、畑だけでなく、醸造にもよりフォーカスしていきたいと思っています。また、いつの日か、シャンパーニュ地方以外の土地でワインも造りたいですね。

明日香:オレリアンさんのワインに対する研究は、まだまだ尽きることがありませんね!

杉山明日香
理論物理学博士。ワイン研究家。唎酒師(ききざけし)。
有名予備校で数学講師を務める傍ら、ワインスクール「ASUKA L’ecole du Vin」にてソムリエ資格試験対策講座を主宰。東京・西麻布のワインバー「GOBLIN」、パリの和食店「ENYAA Saké & Champagne」を経営するほか、ワインと日本酒の輸出入業も。東京とパリを2週間ごとに行き来する多忙な日々。著書に『ワインの授業 フランス編』『ワインの授業 イタリア編』『受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座』など。

Photos:Yuji Ono Text:Asuka Sugiyama Editor:Kaori Shimura

前編

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