続々とレストランがオープンする東京。新しい店にトライしたいと思いながらも、どこを予約すべきか悩む人も少なくないはず。そこで今回は、最高峰のレストランでスーシェフとしての実績を持つシェフが独立を果たした2店をピックアップ。どのような思いでゲストをもてなしているのか、注目のメニューとともにコンセプトを紹介する。

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銀座大石
「北島亭」のパッションを引き継ぐ大石義壱シェフ

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コース中盤に提供する3種類のテリーヌが盛り合わされた一皿。タケノコや菜の花など旬の野菜を添え、季節の移ろいを表現している。

 昨年9月に誕生した「銀座 大石」。早くも予約困難店となり話題を集めているこちらは、今年30周年を迎える四谷の名店「北島亭」で、長年スーシェフとして腕を振るってきた大石義壱さんが独立して構えた店だ。「北島亭」といえば、ワインが進む豪快なフレンチで、ボリュームあるアラカルト。一方、「銀座 大石」は、15皿のおまかせコース(¥24,500)のスタイルでゲストをもてなす。「『北島亭』を知っている方々には、新しいと言っていただいていますが、実は新しくはありません。16年働いていた店で培ったフランス料理の技法や考え方は、自分そのものですから」と大石さん。

 八寸をイメージしたというこちらの一皿は、ビジュアルも優美。奥から、新潟県の青首鴨のテリーヌ。フォアグラ、トリュフ、根セロリのテリーヌ。塩茹で、塩焼き、ピクルスにした野菜のゼリー寄せ。もともとは保存食としての役割を持つテリーヌだが、こちらでは、毎朝作って、その日に使い切る。また、コース全体を通してバターはほとんど使用していない。ワインは、そんな軽さを意識した料理にあわせてフランスを中心にセレクトしている。

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「銀座 大石」オーナーシェフの大石義壱氏。1981年、福岡県生まれ。北九州市のホテルで3年間の勤務後に上京、四谷の正統派フランス料理「北島亭」に入店。22歳より16年間スーシェフとして、料理はもちろん、ワイン、サービスなども幅広く担当。

「北島亭」でスーシェフとして腕を振るっていた時代から、話し好きな大石さん。ゲストとの会話を大切にしたいと考え、自身の店はカウンターのみの12席だ。目の前ですべての調理過程を見ることができる。「銀座 大石」に来れば、手持ち無沙汰になるような間はなく、目の前でエンターテインメントが次々と繰り広げられていく。15皿をおよそ3時間で楽しむが、流行の少量多皿のスタイルとは一線を画する食べ応え、そしてゲストを喜ばせたいという情熱にあふれている。ゲストの食べる量や、ワインペアリングの量を気にかけるなど、細やかな配慮もさすがだ。

 独立については、大石さんは次のように語る。「自他ともに独立しないと思っていましたが、3人の子どもたちの父親として考えたとき、自分の店をやるしかないという思いが強くなりました。オヤジ(「北島亭」北島素幸シェフ)に意を決して伝えると、受け入れてくれました。独立後には、オープンしてすぐにご夫婦で食べに来てくれたことは、とても嬉しかったですね」。聞けば、北島さんも自身が独立したのが現在の大石さんと同じ39歳のときだったそう。