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古くから「春の皿には苦味を盛れ」といわれる。山菜を食べると、天然の苦味やえぐ味が、身体に刺激を与えて活性化してくれるそう。今回は、多くの種類を一度に味わうことができる懐石料理と、見事なアレンジで美しく仕立てられたイタリア料理をご紹介。

伊勢 すえよし
三重から届く多彩な山菜を天ぷらの盛り合わせに

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左から、蕗の薹(ふきのとう)、たらの芽、屈み(こごみ)、漉油(こしあぶら)、筍。三重から届く山菜は、3月から徐々に始まり、4月中旬から5月中旬に充実する。大豆の白絞油(しらしめゆ)で揚げた薄衣が軽やか。

 三重の食材を中心にし伊勢の味覚が楽しめる懐石料理店「伊勢 すえよし」。春になると、見事な山菜の盛り合わせを提供しており、これを心待ちにしているゲストも多い。風情ある竹籠に盛られているのは、蕗の薹(ふきのとう)、たらの芽、屈み(こごみ)、漉油(こしあぶら)、筍(たけのこ)など、春を代表する数々。一度にいただくことで、それぞれの個性がよくわかる。これ以外にも、芹(せり)、うどの新芽、よもぎ、茗荷竹(みょうがたけ)、かぶせ茶なども登場する。

 三重県の坂口国男さんや大洞(おおぼら)農園の浅尾みどりさんから届く山菜は、素材の持ち味がしっかりとしていて上質なものばかり。自身も三重県で生まれ育ったという店主の田中佑樹さんは、現在も月に一度は地元に帰って生産者のもとを訪れている。「幼い頃から知っている坂口さんと、一緒に山に入っていくと、行った先には必ず山菜があります。どこにあるかは感覚によるもので、まさに山菜採りの名人です」と語る。

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「伊勢 すえよし」店主の田中佑樹氏。1988年生まれ、三重県出身。専門学校卒業後、「赤坂 菊乃井」で4年間経験を積んだ後、24歳から世界各地を巡り、2015年に「伊勢 すえよし」を開業。

 店主の田中さんは、1982年に三重の四日市市松本街道に創業した「すえよし」(2018年に閉店)の二代目。幼い頃から、父が営む日本料理の味に親しんできた。「おばあちゃん子だったので、春になると、祖母が採ってきたワラビやつくし、筍の天ぷらを食べていましたね」と振り返る。日本料理の名店「菊乃井」で修業後、グアテマラ、ペルー、アルゼンチン、イタリア、トルコなど世界15国以上を巡り、伊勢の食文化の魅力を再確認。三重の魅力を伝えるべく、西麻布に自身の店「伊勢 すえよし」を構えた。