理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

ルイ14世の時代に誕生した、100年の歴史をもつ老舗ドメーヌ

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ドメーヌ・ドワイヤールの外観。下にシャンブル・ドット(=フランス版のB&Bのようなもの)と書いてあるように、敷地内に素泊まりできる部屋が5つある。

 みなさん、こんにちは。「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第20回では、シャンパーニュ地方のエペルネから南東に車で20分ほど、コート・デ・ブラン地区のプルミエ・クリュであるヴェルテュ村に位置する「ドメーヌ・ドワイヤール」を訪問しました。ドワイヤール家はなんと17世紀から続く、シャンパーニュ地方とともに繁栄してきた歴史ある一族です。今回は11代目当主のヤニック・ドワイヤールさんにお話を伺いました。

明日香:ドワイヤールさん、はじめまして! 杉山明日香です。さっそくですが、ドメーヌの歴史を教えてください。

ヤニック:ボンジュール、明日香! はじめまして。まずは自己紹介からですね。
 ヤニック・ドワイヤールと申します。このドメーヌの歴史はとても古くて、創業は1677年です。ルイ14世の時代からですよ! 私はそこから数えて11代目ですが、私の祖父が1920年にシャンパーニュ造りを始めて、シャンパーニュ・メゾンとしての「ドメーヌ・ドワイヤール」となってからは3代目の当主となります。

明日香:ルイ 14世! いきなり圧倒的な歴史の重みを感じます(笑)。シャンパーニュ造りを始めて、今年でちょうど100周年なんですね!

ヤニック:そうなんです。私たちは、ここヴェルテュ村で1世紀にわたりシャンパーニュを造ってきたんです。そこで昨年、この100年を祝って「リュミエール」というキュヴェのミレジメ2008をリリースしました。私たちにとって特別なキュヴェです。

明日香:畑の広さや品種についても教えてください。

ヤニック:畑は全体で11haあります。そのうち主となる10haには、シャルドネを植えています。ここ、プルミエ・クリュのヴェルテュ村と、ほかはすべてグラン・クリュのル・メニル・シュル・オジェ、アヴィーズ、オジェ、クラマンです。残りの1haはグラン・クリュのアイ村にあって、そこにはピノ・ノワールを植えています。これは主に「ウイユ・ド・ペルドリ」(Œil de Perdrix)というキュヴェのための畑です。
 シャンパーニュの生産量としては全体で、年間4万5000本から6万本ぐらいです。

明日香:キュヴェは何種類くらいリリースされていますか。また、フランス国外ではどちらへ輸出されていらっしゃいますか。

ヤニック:キュヴェはコトー・シャンプノワ・ブラン(シャンパーニュ地方で造られる白ワイン)を含む7~8種を造っています。私のシャンパーニュの約9割は輸出していて、輸出先は主にアメリカ、日本、イタリアですね。フランス国内に流通するのは10%前後といったところでしょうか。私は1995年に輸出をメインにしようと決めて、国外と国内、それぞれの流通バランスが現在のようになったのは2010年からです。

明日香:かなり輸出の割合が多いですね。そのぶん、いろいろな国でドワイヤールのシャンパーニュを楽しめますね!

ヤニック:そうなんですよ(笑)。では、ここからブドウ畑に行きましょう。

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畑にてヤニックさんと。ブドウ樹の背丈は低め。