Anonyme © Sarah Moon
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 彼女の作品世界は言葉に尽くしがたいものだが、自身が作品について言い表すときにしばしば使われる「ephemera(エフェメラ)」という言葉にその謎を解き明かす鍵がある。エフェメラとは、ギリシャ語で1日しか存在しえないものを指す言葉から転じて、蜻蛉(かげろう)や夕顔などの短命な虫や花、役目を終えれば捨てられてしまう栞(しおり)や切手、絵葉書などの紙切れといった「儚いもの」を意味するようになった言葉だという。

「もともと好きな言葉でしたが、なにげなく使ってから私の作品の代名詞のようになってしまいました」とサラは語る。すべてが綿密に準備された撮影現場で「予期せぬものが現れる瞬間」をじっと待つという彼女の創作過程とその心の動きを、エフェメラという言葉が象徴しているのだ。

Dunkerque I © Sarah Moon
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