[画像のクリックで拡大表示]
© CHANEL

 もうひとつの「Catharsis」では、ダンスという行為そのものに宿るスピリットを抽象的に表現している。第一印象は『レ・シルフィード』に代表される、古典バレエに登場する精霊たちを思わせる曖昧なイメージ。凝視してみると、モーリス・ベジャールやピナ・バウシュなど、稀代の振付家が手がけてきた『春の祭典』にも通じる、原初的な儀式性を想起させる。

「当初は、ダンサーから放出されるエネルギーや音楽的ともいえるそのムーブメントをとらえたいと思ったんです。それが次第に、目に見えないものの媒体としてダンサーを撮影しながら感じた、僕自身の感覚を抽出した表現へと変化していきました」

 詩人であり画家でもあるウィリアム・ブレイクの神話的な世界観へのオマージュでもあるという本作には、舞台上で踊るバレリーナから立ち昇る狂おしいまでのアウラの痕跡が残されている。

 近年は、キューバの田舎町で精糖業にたずさわる貧しい人々の現状を巧みに写しとったシリーズを発表したばかりのピブラック。「現地に長期滞在しながら創作するスタイルが自分には向いている」という彼は、実はこの夏まで家族とともに京都に滞在。日本の文学や芸術からインスピレーションを得た新作は、一般市民を演出して、映画や絵画の場面のように仕上げたものになるという。フォト・ルポルタージュの視点を基にした独自の切り口に期待したい。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2020
ピエール=エリィ ド ピブラック「In Situ」presented by CHANEL NEXUS HALL
9月19日(土)~10月18日(日)
会場:京都府庁旧本館 正庁
入場料:無料
https://www.kyotographie.jp/

Text:Chie Sumiyoshi Editor:Kaori Shimura

バックナンバー

芸術家の視点──ピエール=エリィ ド ピブラック展@シャネル・ネクサス・ホール〈前編〉

芸術家の視点――ヤコポ バボーニ スキリンジ展@シャネル・ネクサス・ホール〈後編〉

芸術家の視点――ヤコポ バボーニ スキリンジ展@シャネル・ネクサス・ホール〈前編〉

芸術家の視点――ヴァサンタ ヨガナンタン展@シャネル・ネクサス・ホール〈後編〉

芸術家の視点――ヴァサンタ ヨガナンタン展@シャネル・ネクサス・ホール〈前編〉

芸術家の視点――ピエール セルネ & 春画展@シャネル・ネクサス・ホール〈後編〉

芸術家の視点――ピエール セルネ & 春画展@シャネル・ネクサス・ホール〈前編〉

芸術家の視点――アントニ タウレ展@シャネル・ネクサス・ホール〈後編〉

芸術家の視点――アントニ タウレ展@シャネル・ネクサス・ホール〈前編〉

写真家の視点――ジャン=ポール グード展@シャネル・ネクサス・ホール〈後編〉

写真家の視点――ジャン=ポール グード展@シャネル・ネクサス・ホール〈前編〉

写真家の視点――立木義浩写真展@シャネル・ネクサス・ホール〈後編〉

写真家の視点――立木義浩写真展@シャネル・ネクサス・ホール〈前編〉

写真家の視点――サラ ムーン写真展@シャネル・ネクサス・ホール〈後編〉

写真家の視点――サラ ムーン写真展@シャネル・ネクサス・ホール〈前編〉

写真家の視点――フランク ホーヴァット写真展@シャネル・ネクサス・ホール〈後編〉

写真家の視点――フランク ホーヴァット写真展@シャネル・ネクサス・ホール〈前編〉