銀座のイベントスペース「シャネル・ネクサス・ホール」で開催中の「ピエール セルネ & 春画」展が、連日賑わいを見せている。人間の官能的な姿を抽象的に捉えたセルネの写真作品と、近年世界的にも人気を博す日本独自のエロス表現、春画のコラボレーション。展示替えを挟み、明日3月29日(金)から後期がスタートするので、既に訪れたあなたもまた足を運んでみては?

おおらかで濃やかな性愛の表現と開かれた人間観

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〈左〉Kaitlin & John, 2015 © SP2X 〈右〉葛飾北斎「喜能会之故真通(きのえのこまつ)」(部分) 文化11年(1814) 浦上満氏蔵

 シャネル・ネクサス・ホールで開催中の「ピエール セルネ & 春画」展は、フランスと日本、現代と近世の「性愛」の表現を見事に対比させている。

 フランス出身のパフォーマンスアーティストで写真家のピエール・セルネは、「Synonyms (同義語) 」と名付けられたシリーズの新作を発表した。画角をおおらかに切り取るモノクロのイメージは、白いスクリーンに映った影を撮影したもの。それぞれ文化的、民族的に異なる背景を持つ人物のヌードや、異性・同性カップルのセックスの情景である。そのシルエットは極限まで抽象化され、性別、肌色、体形などの違いはほとんど識別できない。

 鑑賞者は、作品タイトルになった被写体の名前だけを手がかりに、彼らのプロフィールや睦事(むつごと)の様子を推測するのだ。

 セルネの作品のテーマは、環境や文化の差異のなかで、人間にも違いはあるが、裸体になれば似た者同士であるということ。「他人の違いに対してオープンになり、受容性をもつべきであるということです。日本社会は、明治以前、開国前はむしろもっと開かれていたはず。現代の日本もまた、そうなってほしいと願っています」(セルネ)

 彼は10年ほど前、メトロポリタン美術館で観た日本の掛け軸に本作のインスピレーションを得た。それは障子の向こうの男女のシルエットが描かれたもので、春画ではないがセクシーと感じたという。

 「1978年頃から日本文化に興味を持ち始め、最初は日本の建築にハマり、その後は明治の人々の写真をコレクションするようになりました。初めて春画を見たのはニューヨークで、その質の高さと、生き生きとした楽しい感じが印象的でした。日本でも、芸術作品としていま一度きちんと再認識されるべきだと思います」(セルネ)