自分の限界ばかりが見えてきたこともあった

──30代で最初の主演作ですが、30代になって意識として変わった部分はありますか?

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 仕事に対する考え方が変わった気がします。
 やっぱり10代後半から20代後半の頃は、考え方がもっとガチガチで。役を演じるにしても選んでしまうというか、これは僕じゃない、僕はこういうのと違うという気持ちがめちゃくちゃありました。そうなってしまうと役が理解できなくて、演技をするのが正直つらくなってしまうことも。それでも20代半ばくらいまでは勢いでどうにかなっていたと思いますが、そうやって自分の中だけでやっていると、自分の限界ばかりが見えてくる。このままでは無理だなと。
 今はその当時に比べて、「この1秒のために」と言えるようになりましたね。「この場面を自分はどう演じるのかな」というようなたったひとつの興味さえあれば、その作品に参加したいと思えるというか。

──でもその当時から変わらず声をかけてくれる監督さんも、廣木隆一さんや熊切和嘉さんなど何人もいらっしゃいますよね。

 若い頃から今も声をかけてくれる監督さんたちは、昔を知っているから、余計にそういう変化を見たくて使ってくれるんじゃないかと思います(笑)。変わらない部分ももちろんありますが、基本的にこの仕事をしていたら、演じる役にしろ、出演する作品にしろ、変化がないとつまらないですよね。成長という意味も含めて。
 とはいうものの、俳優の仕事って基本的に“待ち”なので、今の自分がいい作品に出られているなら、それはラッキーとしか言いようがありません。

──なにかきっかけがあったのでしょうか?

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 自分で意識して変わりたいと思っていたのもありますが、ある時期から「自分とは違う人間を演じるんだから、わかんないよな」と思うようになったんです。わからないことを悔しがったり落ち込みすぎたりしても意味がないし、だからって、わかった気になるのも変だなって。自分の中でグレーのままでいい、わからないままでいいと思える部分が大きくなったのはあるかもしれません。全部わからなくたって演じられるし、演じるんだっていう。

──おっしゃっていた作品についての「わかりやすさ」みたいなものに、通じるものがあるかもしれませんね。「理屈で理解すること」と「理屈とは違う部分で感じること」と。

 そうかもしれないですね。これだと決めずに演じることで、観客が感じてくれるものの幅が広がることもあるし、逆に見た人から言われることで、「あ、そういうことだったんだ」と気づくこともあるんですよね。最近は、それでいい、それがいいなと思うんです。