理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

ポルトガルの生まれ、シャンパーニュ育ちの祖父が開いたドメーヌ

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〈左〉ドメーヌの看板。左から、畑仕事、収穫、醸造、最後に飲む様子が描かれている。 〈右〉アヴィーズ村にあるドメーヌ・ド・スーザ・エ・フィスの外観。

 みなさん、こんにちは! 「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第9回では、シャンパーニュ地方はエペルネの南部に広がる生産地、コート・デ・ブラン地区のグラン・クリュのアヴィーズ村に位置する「ド・スーザ・エ・フィス」をご案内します。ドメーヌまではエペルネから車で15分ほど。こちらで3代目当主、エリック・ド・スーザさんに話を伺いました。

明日香:さっき、ドメーヌの入り口で見た看板がとても愛らしいですね。看板の絵から、ブドウを育てて、収穫し、シャンパーニュを醸造して、最後は味わい、楽しむ、という一連の流れがわかりますね! さっそくですが、まずはドメーヌの歴史について教えてください。

エリック:ここは祖父が始めたドメーヌで、私で3代目となります。私の曽祖父は軍人で、第1次世界大戦時にフランスの応援部隊としてポルトガルからシャンパーニュ地方に来ていました。戦後になって、もともとこの地で造られていたシャンパーニュを立て直そうと、そのまま戦後復興要員としてシャンパーニュ地方に残り、のちにポルトガルから家族全員を呼び寄せました。なので、祖父はポルトガル生まれのシャンパーニュ育ちなんですよ。

明日香:ド・スーザはポルトガルのお名前なんですね。

エリック:はい。フランスにおいてはすごく珍しい名前なので、いつもどこの国の名前なのか聞かれるんです(笑)。そして祖父はシャンパーニュで育ち、この隣のオジェ村出身の祖母との結婚を機に、自分の名前でドメーヌを始めました。

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〈左〉樹齢60年ほどの古木。やさしく、おだやかな佇まい。 〈右〉樹齢2年のブドウ樹。ここから4~5年で実をつけるようになる。