明日香:ひょっとして、ド・スーザのエチケットに描かれている化石はここからきているんですか?

エリック:そうなんです! うちの畑はビオディナミ農法で、除草剤や化学肥料などをいっさい使わず、カモミール、西洋タンポポなどを用いた自家製の調合薬を使っています。畑は馬で頻繁に耕していて、非常にやわらかい。耕すことにより、土の中へ空気がたくさん送り込まれ、微生物がより活発化し、ビオディナミ農法が可能となるんです。このように冬の間に真ん中の土を根にかぶせ、春がきたらまた土を平らにすることで、酸素を土により多く供給することができ、結果、ブドウの根にいい影響を与えることができます。

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カーヴの熟成室。正面奥に、この地で発掘された古代生物の化石のモニュメントが飾られている。

明日香:すごく考えられた畑仕事ですね。ブドウの樹齢は何年ぐらいのものが多いのですか?

エリック:平均樹齢45年で、このエリアの畑は60年ぐらいのものが多いです。古いものだと80年ぐらいのものも。こういう古木はだんだんつける実が減っていくので収量は落ちるんですが、樹齢を重ねるごとに根が深くなり、土壌のさまざまな成分を吸収するので、熟度が高くミネラル豊富で、味わいの深い、バランスのとれたブドウが収穫できるんです。実がまったくならなくなったら、一本一本新しい樹に植え替えていってます。

明日香:なるほど。この樹齢60歳の古木の横に、赤ちゃんみたいなブドウ樹が。この子で何歳ぐらいなんですか?

エリック:ちょうど2歳ですね。

明日香:すごく小さくて、なんだかとても可愛らしいですね。

エリック:そうなんですよ。毎日、「元気に育ってね!」と思いながら、触れています。実がなるようになるまでには5年ぐらいかかるので、まだまだ赤ちゃんですね(笑)。

明日香:ところで、ビオディナミに切り替えられたきっかけは、何かあったんでしょうか?

エリック:シャンパーニュのクオリティを高めるためには何をしなければいけないかを考えたときに、醸造の面であれば、熟成をステンレスタンクからオークに替えることによって、味わいに深みが出せる。でも、もっと根本的なものは?となると、やはりブドウそのものの質をより高めること。そうするにはビオディナミしかないと思い、切り替えました。

明日香:なるほど。クオリティありきで、たどりついた答えだったんですね。やはり、シャンパーニュ造りにおいても、畑の仕事は非常に重要ですね。

(後編に続く)

杉山明日香
理論物理学博士。ワイン研究家。唎酒師(ききざけし)。
有名予備校で数学講師を務める傍ら、ワインスクール「ASUKA L’ecole du Vin」にてソムリエ資格試験対策講座を主宰。東京・西麻布のワインバー「GOBLIN」、パリの和食店「ENYAA Saké & Champagne」を経営するほか、ワインと日本酒の輸出入業も。東京とパリを2週間ごとに行き来する多忙な日々。著書に『ワインの授業 フランス編』『ワインの授業 イタリア編』『受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座』など。

Photos:Yuji Ono Text: Asuka Sugiyama Editor:Kaori Shimura

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