理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

有機的なアプローチを最大限に行い、ブドウの品質を高めるのが私たちの哲学

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〈左〉ドメーヌの外観。左下の看板の「ブラン・ド・ブラン」(BLANC DE BLANCS)は白ブドウのみで造った白のシャンパーニュという意味。 〈右〉看板は、デゴルジュマン(澱抜き)の作業を表している。

みなさん、こんにちは。「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第21回の訪問は、シャンパーニュ地方の中心都市エペルネから車で10分ほど、コート・デ・ブラン地区のグラン・クリュであるクラマン村に位置する「シャンパーニュ・ぺルトワ・ルブラン」です。現在、5代目当主としてドメーヌを牽引しているのは、クレマンさんとアントワーヌさんの若き兄弟。前編では、弟のアントワーヌさんにお話を伺いました。

明日香:はじめまして! 今日はお目にかかるのを楽しみにしていました。さっそくですが、ドメーヌの歴史を教えてください。

アントワーヌ:こんにちは、明日香さん。今日はよろしくお願いします。
 我が一族のワイン造りの歴史は、この地で20世紀と時を同じくしてはじまりました。シャンパーニュ・ペルトワ・ルブランとしては、1955年に創始者となるクラマン村のポール・ぺルトワとル・メニル・シュル・オジェ村のフランソワーズ・ルブランが結婚したことがその始まりです。彼らは私たちの祖父母で、2人の実家はどちらもワインの醸造農家でした。その後、祖父母は3人の娘に恵まれ、1985年に引退するまでシャンパーニュ造りに精を出していました。彼らの引退を機にドメーヌを継いだのは、3人娘のうちのひとり、オディール・ぺルトワで、私の母の妹です。
 ドメーヌの歴史で次の転換点となったのは2007年で、オディールの後継者として彼女の甥で、私の兄であるクレマンがドメーヌに参加し、5代目当主となりました。のちに、私も家業に参加することとなり、現在に至ります。

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畑にて、アントワーヌさんと。奥に見えるのは、モエ・シャンドン社所有のシャトー・ド・サラン。

明日香:20世紀のはじまりとともに……ってなんだかステキですね! 私、“はじまり”って大好きなんです。

アントワーヌ:そう言ってもらえるとうれしいですね。ご存じかと思いますが、ここシャンパーニュにはフランス革命の時代から続くドメーヌも少なくないので、うちは“古くもなく、新しくもなく”という感じでしょうか(笑)。

明日香:120年の歴史があって、“古くもなく”……とは、やはりフランスならではですね! クレマンさんは、ずいぶんお若くしてドメーヌを継いだのではないですか?

アントワーヌ:そうですね。兄は当時28歳でしたが、この仕事を始める前に、アヴィーズでワイン醸造とドメーヌを継承するために必要な資格試験に合格していました。若いながらも、“シャンパーニュ造りの近代化”と“有機的なアプローチで、土壌の特性とその植生を最大限に活かす”という明確な目的があったのです。

明日香:まだ20代なのに、すごいですね! アントワーヌさんはどのような経緯でこの仕事をはじめられたのですか?

アントワーヌ:私はビジネススクールを出てから、しばらくパリでコンサルタントとして仕事をしていて、その後、2013年にクレマンと一緒に仕事をすることになりました。兄が仕事に取り組む様子やその情熱を目の当たりにしてきて、この仕事はやりがいがあるだけでなく、とても高貴なものだと感じていたんです。そこで、私のそれまでのキャリアを最大限に活かして、マーケティングや販売、流通の面での課題にフォーカスして、取り組むことにしたんです。

明日香:なるほど。それぞれの得意分野がそのまま活かせるから、役割分担が最初からきれいにできあがっていたんですね。

アントワーヌ:はい。なおかつ兄弟ですから、いい呼吸があるというか、本音でぶつかり合いながら、すぐに理解し合えるところが多いのも強みになったと思います。

明日香:普通の会社はそこまでに至るのが大変だと思うんですが、やはりそこは兄弟ならではの強みですね!

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アントワーヌさん(左)と兄のクレマンさんは仲よし兄弟。

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