理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

それぞれの役割分担のなかで、より懸命に、よりプロフェッショナルに

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ワインセラーには木樽、アンフォラ、奥に見えるコンクリートタンクが所狭しと並ぶ。

みなさん、こんにちは。「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第21回では、コート・デ・ブラン地区のグラン・クリュであるクラマン村に位置する「シャンパーニュ・ぺルトワ・ルブラン」におじゃましました。後編ではセラーを案内してもらい、5代目当主のクレマンさんとアントワーヌさんの仲よし兄弟に囲まれて、楽しいテイスティングを行いました。

アントワーヌ:(ワインセラーにて)さあ、ようこそ! ここが私たちのセラーです。コンパクトですが、とても効率的な空間なんですよ。

明日香:ワーオ! この大きな卵のようなものは、アンフォラ(素焼きの壺)ですね!!

アントワーヌ:そうです。ご覧のとおり、6つのアンフォラを使っています。それぞれに、コート・デ・ブラン地区にあるグラン・クリュが入っています。私はこの地にある6つのグラン・クリュのうち、アヴィーズにだけは畑を持っていないので、今のところ、アヴィーズのものだけは、知り合いの造り手のブドウを購入しています。

明日香:コート・デ・ブラン地区の全グラン・クリュのワインが、しかもそれぞれアンフォラに入って目の前にあるなんて、ワクワクします! これは何か新しい取り組みのひとつなのでしょうか?

アントワーヌ:ステキでしょう(笑)。私たちは2018年以降、マグナムでのみリリースする新しいキュヴェを、それぞれのグラン・クリュごとに造るプロジェクトを開始しました。

明日香:コート・デ・ブランのグランクリュ・アンフォラシリーズ? こんな試みはほかで聞いたことありません。とても面白いプランですね!

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〈左〉セラーの入り口には、昔の機材などもディスプレイされている。 〈右〉澱とともに熟成中。

アントワーヌ:ありがとうございます(笑)。ほかに、各グラン・クリュの個性や特性の詳細をより楽しんでもらうためのセットをつくる予定です。具体的には、6つある各グラン・クリュごとのシャンパーニュを1本ずつ、6本を1ケースとして、年間150ケースほどつくります。

明日香:すごい! 絶対に試してみたいです! 今、ワンセット予約できますか?(笑)

アントワーヌ:もちろん。これはそれぞれのグラン・クリュとそのヴィンテージを楽しむための特別なものです。

明日香:本当に楽しみですね! ところで、このセラーはいつからあるものですか?

アントワーヌ:ここは1960年に建てて以来、ずっと受け継がれてきたものです。建てた当初から、ここでワインを造り続けています。

明日香:そうなんですね。現在、年間どれくらいの生産量でしょうか。

アントワーヌ:年間3万~3万5000本ほどです。

明日香:輸出とフランス国内への流通の割合はどうですか?

アントワーヌ:昨年は約35%が輸出、残りが国内での消費でした。今年は輸出が45%ほどまで増加すると思います。

明日香:輸出の割合が増えていってるんですね。主な輸出先はどちらでしょうか。

アントワーヌ:いちばんの輸出先はスウェーデンとイタリアで、続いてオーストラリアとデンマークです。全部で15カ国に輸出しています。

明日香:マーケットは主にヨーロッパなんですね。