「週末は、二人でナパのワイナリー巡りをしました。『いつか、小さなワイナリーを持ちたいね』と話していて、2001年にソノマに土地と小さな建物を見つけ、即、購入しました」。ソノマはピノ・ノワールとシャルドネの生育に適した土地。二人ともブルゴーニュ・スタイルのワインが好きだったことからこの地を選んだ。とはいえ、ワイン造りに関してはまったくの素人。当初は「テスタロッサ」でワインメーカーを務めていたエド・カーツマンさんにコンサルタントを依頼した。アキコさんは彼の助手として後をついて回っては、一から仕事を覚えていったという。だが、ワイン造りは思いのほか重労働。華奢な彼女にとってつらくはなかったのだろうか。

「収穫や樽の運搬など、なかなか難儀でしたね。ホースひとつにしてもとにかく重い(笑)。でも、丁寧にブドウに向き合えば、ワインはきちんと応えてくれる。それがうれしくて、ワイン造りにハマっていきました。夫が外部との交渉を担当してくれたので、私はワイン造りに専念できたこともありがたかったですね」

カリフォルニアの復活を願って

 だが、日本人女性が母国ではない土地で仕事をするのは、そうたやすくはないはず。

「差別や偏見といった外的なものからは夫が守ってくれました。これには、本当に感謝しています。ですが、ワイン造りはまた別の問題。夫やエドと意見が違うことは多々あります。でも、そんなとき、私はあえて戦わないようにしています。まずは相手の話を聞き、『なるほど、そういう意見もあるのね』と肯定したうえで、『でも、私はこう思うの』と話すようにしています。すると、またそこから新たな扉が開くことがある。これは、どんな間柄においても、相手を理解するうえで大切なコミュニケーションではないかと思っています」

 そう穏やかに語る彼女だが、実は昨年、悲しい出来事があった。10月のカリフォルニア大火災だ。

「今、現地は風評被害に悩んでいます。アメリカ人のなかには、ナパやソノマはもう機能していないと思っている人もいる。確かに、当初は大変な状況にありましたが、人々がひとつにまとまり、今では復活を遂げています。『この国の力はすごい!』と実感しました。今は、皆さんがこの地を訪ねてくださること、カリフォルニアワインを飲んでくださることが、大きなパワーになると信じています」

 こう語るアキコさんからは、カリフォルニアを愛する心は当然ながら、日本人女性としてきちんと生きようとする精神が伝わってくる。その凛とした佇まいは、彼女のワインそのものでもある。


アキコさんも来日! 5月にソノマワインのテイスティングイベントを開催

 2018年5月25日~27日の3日間、カリフォルニア州のソノマを代表するワイナリー20社以上が集まるテイスティングイベント「ソノマ・イン・ザ・シティ 東京 2018」が開催される。アキコ・フリーマンさんが手がける「フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー」も参加。内容は120種類を超えるワインの試飲のほか、フード&ワインペアリングやミニセミナー、チャリティオークションなども。この機会に、ソノマのワインの魅力をぜひ体感してみて。詳細と参加申し込みは公式サイト(https://www.drinksonomawine.com/)より。

アキコ・フリーマン
東京生まれ。ニューヨークの大学で西洋美術史を学び、卒業後はエデュケーターとして子どもたちに美術鑑賞の仕方などを指導する。中世後期のイタリア人画家ジョットが好きで、「やさしい光の陰影に惹かれます」。ワインも繊細なピノ・ノワールとシャルドネを好み、自身のワインも2種に特化。なかでも「アキコズ キュヴェ ピノ・ノワール ソノマ・コースト」は権威あるワインコンペティションで金賞を受賞するなど、世界的に高い評価を得ている。

Photo: Hisashi Miyakawa Text: Kimiko Anzai

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