くすりのプロ、薬剤師を今日から味方につける。

 もっとも、くすりの点数や用量の調節は、素人が自己判断でやることではない。専門家にアドバイスを仰いでから取り組むのが筋だ。

 くすりの専門家といえば、薬剤師。秋下教授は言う。「複数の病院にかかっている場合でも、くすりをもらう薬局は一カ所に決めるといいでしょう。投薬全体を把握してくれる薬剤師がいるのは心強い。薬剤師は、処方内容について、処方した医師に問い合わせられる資格を持っていますから、例えば、親の処方内容に疑問や不安がある場合も、くすりの情報が一カ所に集約されていれば、医師への照会などもやりやすいのです」。

 かかりつけ医と同様に、かかりつけ薬局をもつ。まだそれほど、くすりに敏感になる必要がない世代でも、今はコンビニに医薬品が並ぶ時代。そして前段の通り、「くすりと毒は表裏一体」であることを考え合わせると、継続的に相談できる薬剤師がいるのは安心だ。

 高齢者医療の現場で日々奮闘する秋下教授は、こんなふうに締めくくる。「高齢者における多剤併用問題も、結局は、それまでの生活習慣が招いた結果。『くすりが多いですね、減らしましょう』となる前に、なるべく少ない薬ですむよう、若いうちから心がけてほしいものです」。最晩年とくすりの“現実”を前に、今からできることとは、「食事」や「運動」に気を配ること──極めて平凡な結論だが、やはり王道は、そこなのだ。

秋下雅弘教授
東京大学大学院医学系研究科 加齢医学
東京大学医学部附属病院 副院長
秋下雅弘教授 1985年東京大学医学部卒。ハーバード大学研究員、東京大学大学院医学系研究科准教授などを経て現職。高齢者の適切な薬物使用について研究、情報発信している。「多剤併用問題は、患者側が望んで招いている面も否定できません。くすりで治る、病院に行ったらくすりをもらわないと損、といった発想がある。でも、結果、治療の質が下がるほうがよほど損です」

Photos: Tsuyoshi Ogawa Text: Masahi Kitamura Editor: Yuko Sano

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