「昔と同じ」では多すぎる!?「今の体」に合った量を。

年齢別平均投薬数

「社会保険医療診療行為別調査」(平成26年6月審査分)より

 秋下教授は、投薬量が多い場合はまず、「そもそも本当にそのくすりが必要なのか、という視点で、投薬全体を見直す必要がある」と指摘する。「例えば、しびれに効くとされるくすりをずっとのんでいるが、症状が治まっていない。であれば、『そのくすりは不要』なんです。それなのに、漫然とのみ続けて、結果、多剤併用を招く事例が案外と多い」(秋下教授)。

 なお、ここでは多剤併用の問題を、医師が出す処方薬における問題として説明したが、「多種類のくすりを同時にとる」こと自体は、薬局やコンビニ、ネットなどで入手できる市販薬でも起こりうる。

 さらに、「体とくすり」の関係から考えると、見過ごせないのが、「加齢による体側の変化と、くすりの量」だ。

 通常、くすりを代謝・排泄する能力は、加齢とともに低下する。一方、くすりを吸収する能力に加齢変化は少ないとされている。従って、高齢者の体内では、くすりの排泄スピードが遅くなっていて、薬効が長く続く(残る)傾向に。高齢の人に、若い人と同じ量を投薬すると、くすりが効きすぎる状態に陥って副作用が出かねない、というのだ。

「アルコールを分解する能力は、歳とともに低下することが知られています。『お酒に弱くなった』とか『残るようになった』と同じようなことが、くすりでも起きるのです」と秋下教授は言う。

 また、「加齢による体の変化」を踏まえて、治療の目標値が見直されるケースもある(下のコラム)。例えば、高血圧の治療では、一般には140/90mmHgを切るのが目標だが、「現在、75歳以上では、状況に応じ、もう少し緩い目標にしようという考え方になっています」(秋下教授)。それなら、くすりの量も少なくてすむ。

 より踏み込んでいうなら、こういうことだ。高血圧の治療とは、将来の脳卒中や動脈硬化のリスクを下げるのが目的。だが、「若い人と高齢者では、『将来のリスク』の重みが違いますよね? そういうことまで念頭に置き、どんな治療がいいのかを個別に決めていく。くすりの処方を含め、今、医療全体に、そんな発想が求められているのです」(秋下教授)。

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