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アルバート・ワトソン「Wild」 京都文化博物館 別館 共催:京都府 presented by BMW © Takeshi Asano - KYOTOGRAPHIE2019

 今年の最大のクライマックスといえるのが、アルフレッド・ヒッチコックやスティーヴ・ジョブズなどのポートレートで知られ、現代写真を代表するアルバート・ワトソンの個展だ。京都文化博物館のクラシカルな建築は、吹き抜けから注ぐ柔らかい光を生かして空間構成されている。

 ここでは、古代エジプト王の副葬品や祝祭の化粧を施した部族、美しい獣と化したミック・ジャガーや哲学的なオブジェを被ったデヴィッド・ボウイなどのミュージシャンたち、そして写真家の故郷であるスコットランド・スカイ島の荒涼とした風景、といったさまざまな対象が混在しながらも、ひとつの通奏低音を響かせていた。それは本展キュレーターであるフランソワ・シュヴァル氏が記したように、ワトソンが「失楽園」を追い求める旅路のなかで見いだした人間の美だろうか。卓越したプリント技術を誇るワトソンの写真展示は、彼自身の人間観とともに、急速に発展してきた文明といまだ進化の過程にある人類の関係性をも批評していたように思う。

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アルバート・ワトソン「Wild」 京都文化博物館 別館 共催:京都府 presented by BMW © Takeshi Asano - KYOTOGRAPHIE2019

 目に見えない共振や共鳴を意味する「VIBE」を基調テーマとする今年のKYOTOGRAPHIE。歴史や社会の烈しい変化のなかで、言語化されず、置き去りにされた「不都合な真実」を炙りだす作品に特に強く惹き付けられた。写真や映像は、歴史や社会の暗部にも光を当てることに長けた芸術表現だ。私たちは表面化されない真実をやり過ごしてしまうわけにはいかない。アートに潜む「VIBE」を感知するために、野性のセンサーを常日頃から研ぎ澄ませておかなければならないのだ。

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2019」
~2019年5月12日(日)
https://www.kyotographie.jp/

Text:Chie Sumiyoshi Editor:Kaori Shimura