石川県の新品種“百万石乃白”を使った新作「天狗舞 COMON 純米大吟醸」

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「天狗舞 COMON(コモン) 純米大吟醸」720ml ¥1,700

 今年1月、石川県は11年かけて開発した酒米の新品種「石川酒68号」の愛称を「百万石乃白(ひゃくまんごくのしろ)」に決定した。大粒の「ひとはな」と吟醸酒向けの「新潟酒72号(越淡麗)」を掛け合わせた県独自の酒米を「山田錦」と交配させて生まれたもので、表面を削っても粒が割れにくく、50%以下に精米する大吟醸酒の醸造に適している。「百万石」には加賀百万石の石川県の酒米であることを表現し、「白」には混じりけのない純粋さと精米された酒米の白さ、仕込み時期の雪景色がイメージされている。

 新たな酒米「百万石乃白」は現在、石川県内の約20社が19年産で醸造している。車多酒造では、4月上旬に新商品として「天狗舞 COMON 純米大吟醸」を発売した。「COMON」には2つの意味があり、一般的に普段着として用いられる着物である「小紋」と、共通の、共有のという意味の英語「common」から。酒文化を次代へとつなげるべく、日ごろ日本酒になじみの少ない人にもわかりやすいよう、味わいやおすすめの温度帯を図で表示している。軽快な飲み口で、酸味と旨味が調和した心地よい飲み応え。日々の生活に寄り添うような味わいだ。


車多酒造
石川県白山市坊丸町60-1
TEL:076-275-1165
http://www.tengumai.co.jp/

新動向が見逃せない、日本酒の味わいを決定する「酒米」

 そもそも酒米とは、日本酒を醸造する原料で、主に麹米(こうじまい)として使われる米のこと。正式には「酒造好適米」もしくは「醸造用玄米」と呼ばれ、その数は100種類以上ある。品種ごとにさまざまな特徴があるが、同じ品種でも栽培する土地によって品質は変化する。通常、私たちが食べる食用米や一般米とは区別されるが、精米技術の向上などで、コシヒカリなど飯用品種で醸した商品も多く登場。フランス産の「マノビ」は日本ではまだ認定されていない品種だが、今回のテーマに合わせて広い意味で捉え、存在を知っていただきたく紹介した。

 主要な酒米を生産量順に紹介すると「山田錦」「五百万石」「美山錦」「雄町」などが代表的。今回取り上げた「雄町」は、「山田錦」と人気を二分する存在とされ、雄町で醸した日本酒だけを集めた品評会「雄町サミット」も開催されている。愛飲するファンも多く“雄町スト”というネーミングがあるほどだ。しかし、かつては絶滅してしまったものを復刻した「復刻米」でもある。復刻された酒米には、ほかに「穀良都」「亀の尾」「渡船」「祝」「強力」などが挙げられる。菊水酒造では、「雄町」を親に、子に「五百万石」を生んだ酒米「菊水」を、わずか25粒の種籾から復活させた純米大吟醸の商品を展開している。

 今回は石川県で誕生した酒米「百万石乃白」を紹介したが、新たな酒米を開発する動きは各地にある。県を代表する酒米を作ることで、酒米、酵母、水という日本酒の原材料をすべて県産とし、県のブランディングにもつなげているのだ。最新のものでは、福井県の新たな酒米「さかほまれ」を使用した新酒が、4月19日に17蔵から一斉に発売された。ちなみに、「百万石乃白」の愛称は、全国から約3000件あった応募から決定したものだが、他にも酒米の名前には「夢山水」「神の穂」「譽富士」「露葉風」「夢一献」など、風情あるものが多々ある。ワインを葡萄の品種から選ぶように、お好みの酒米から日本酒を選ぶことも楽しいだろう。

外川ゆい
フードジャーナリスト。
外川ゆい 1980年生まれ。グルメ誌やライフスタイル誌を中心に、レストラン、ホテル、お酒など、食にまつわる記事を幅広く執筆する。なかでも日本酒をこよなく愛し、蔵元とお酒を交わす時間がなによりの至福。相手への敬意を込め、常日頃から和装。

Photos:sono(bean) Text:Yui Togawa Edit:Mizuho Yonekawa

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