明日香:やはり、まず最初は何よりも土壌!なんですね。

ジャン・エルヴェ:私たちが目指すのはとてもシンプルで、収穫量は多くなくていいから、質のよい、熟したブドウを作ることです。土壌づくりに軸を置いた畑仕事の中で我々が常にチェックしているのは、土壌の健全性とその湿度なのですが、直感でわかります。そして次に重要なのは、ブドウ樹の仕立て方です。例えば、ここはピノ・ノワールの畑ですが、「コルドン」と呼ばれる仕立て方で植えています。私たちは毎年新しいブドウ樹を古いブドウ樹に植えつけます。これはよいブドウをつくるブドウ樹のパワーを集中させるためのもので、「パーマネントコルドン」と呼ばれる手法です。

明日香:畑全体では、どのような品種を植えていらっしゃいますか。

ジャン・エルヴェ:今は50%がシャルドネ、35%がピノ・ノワール、15%がムニエという品種構成です。20年前は10%がピノ・ノワール、40%がムニエでした。このエリアは基本的にはムニエに適した土壌として有名ですが、栽培を続けるうちに、この土壌にはムニエではなく、ピノ・ノワールが適しているとわかったのです。

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手前左側に見えるのはなんと桜で、満開を過ぎたあたり。葉桜が美しい。

明日香:今ここで、芽吹いて間もない葉を見ることでできますが、いくつかの葉は青ではなく茶色になってますね。なぜでしょうか?

ジャン・エルヴェ:大変残念なことなんですが、先日(4月中旬)コート・デ・ブラン地区で気温がマイナス5度まで下がった際に霜が降りて、その影響がこの樹に出ているんです。このあたりはマイナス3度ぐらいまでで、土壌自体は乾燥していたので、ブドウ畑全体としては問題ありませんでしたが、今後は日照に恵まれ、季節外れの寒さがやってこないことを祈っています。

明日香:気候が相手となると、できることも限られるので本当に難しいところですね。ジャクソンの畑は、オーガニックでしょうか。

ジャン・エルヴェ:基本的にはオーガニックですが、完全なオーガニックには限界があるので、必要なときには最小限農薬を使うリュットレゾネ(=減農薬農法の一種)です。私たちはブドウ畑の土壌や地理的条件などによってブドウ畑の3分の1は完全なオーガニックで栽培していますが、3分の2は従来の方法で栽培しています。もちろん、高品質のシャンパーニュ造りのためにそうしているので、必ずしも従来の方法が悪い、と考えているのではありませんよ。

明日香:最近では、多くの生産者の方が100%のオーガニック栽培に切り替えたいとおっしゃっているのをよく耳にします。

ジャン・エルヴェ:私たちが最も重要視しているのは、土壌を大切にし、ジャクソンのシャンパーニュのアイデンティティとクオリティを守り続けることです。ただ実際のところ、完全な有機栽培でブドウ病害のすべてに対応しようとすると、矛盾してしまう点が出てくるのも事実です。例えばベト病(=カビによる病害)の場合、有機栽培であれば硫酸銅を使うことになりますが、これは病害への対策になっても、土壌にとっては毒になります。これはほんの一例で、有機栽培における対策の中には、土壌を含めた畑全体を見たときに、危険となりえるものもあるのです。私たちは、有機農法にこだわりすぎることにより、発生しうる危険について細心の注意を払っています。