ジャン・エルヴェ:弟と2人でメゾンの運営まで含めてすべてやっているので、お互いにとても助かっています。どんなに聡明だとしても、人はひとりでは違う意見の誰かとコミュニケーションをとりながら試行錯誤することができません。私たち兄弟は非常によく話し合うことで、時にまるでばかげたアイデアが出ることもありますが、同様にとても有効なアイデアが生まれることもあります。
 例えば、ワインの味わいについて。ここにある小さな樽たちは、そんな新しいアイデアを試すためにあるんですよ。実験的な試みを重ね、失敗することがあっても小さな樽で済ませることができます(笑)。この小さな樽はリザーヴワインの一部を保管するためにも使います。私たちのリザーヴワインは一部タンクで保管しますが、他の一部は大きめの樽でも保管します。

明日香:さまざまなアイデアが生まれては挑戦して、なんだか楽しそうですね! アッサンブラージュはどなたがされているんですか? また、メゾンでのお2人の業務分担についても教えてください。

ジャン・エルヴェ:アッサンブラージュについては、もちろん私たち2人のほかにもスタッフがいて、一緒にやりますが、最終的には我々兄弟で意思決定をします。意見が違う場合は、お互いが納得するまで話し合う。まあ、そんなにぶつかることはないですけどね(笑)。また、畑は2人でやってますが、メゾンでの分担は、弟のローランが主に醸造分野を担当し、私は英語が話せることもあって、流通や販売などの業務管理分野を担当しています。しかし、重要事項については常に2人で結論を出すことにしています。

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〈左〉サロンでテイスティング。ともに黄金色で、フレッシュな果実味と芳醇な熟成香が共存する。 〈右〉比べると、キュヴェ737D.T.のほうがイーストやマッシュルームのような香りを強く感じる。

明日香:ご兄弟のステキなコラボレーションですね! お2人のご経歴やご家族について教えてください。

ジャン・エルヴェ:私自身はワインやブドウ畑とはまったく関係のない経歴で、ローランも、もともと建築家なんです。私は、シャンパーニュ造りをしていた父の健康状態が悪くなってきたことがきっかけで、家業を継ごうと決心しましたが、そのときは、ローランにも戻ってきてもらって家業を強要するようなことは望んでいませんでした。でも、しばらくして、彼が自ら一緒にやりたいと言ってくれて、そこから私たち兄弟2人での挑戦が始まりました。

明日香:お話を聞いていると、お2人の結束、信頼関係を強く感じます。次世代についてどうお考えですか?

ジャン・エルヴェ:私には2人、ローランには3人の子どもがいて、私の長男は既に一緒に仕事をしています。次男はとても情熱的なタイプでお酒も好きなのですが、彼がどうしたいのかは、今はまだよくわかりません。ローランの長男はもともとエンジニアでしたが、家業に携わるようになってからこの仕事への興味がより増して、今ではアルゼンチンのブドウ畑で働いています。2番目の子はエンジニアとして頑張っていて、末っ子はまだ16歳です。
 私たちの世代は、「この仕事を選ばざるを得ない」ところもあり、人生の選択は息子たちの世代よりはるかに簡単だったと思います。現代は選択肢があまりにも多いですし、そのぶん悩みやすい。息子たちは、仕事を変えたいと思ったら、本当に何がやりたいのかを私たちに真剣に説明し、納得させなければなりません。私たちは既にこの仕事について確立されたものを持っているので、子どもたちがチャレンジしたいと思っても、それが簡単に許されるわけではありません(笑)。