薔薇は甘い。薔薇は優しい。薔薇はあでやか。それだけだろうか? ローズの解釈を根底から覆す、フレデリック マルの至高のパルファムは、あなたの中に眠る感覚を揺さぶり、目覚めさせる。

ローズだけどローズではない、矛盾に満ちた鮮烈な香り。

“香りの出版社”を名のるだけあり、パルファムのボックスのスリーブは本を連想させるスタイル。鮮やかな赤の外装を取り去ると現れる、ミニマルかつ重厚なボトルにもまた、ブランドの美意識がにじみ出る。
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 “エディション ドゥ パルファム”=香りの出版社。これが「フレデリック マル」というブランドのあり方だ。創設者のフレデリック・マルが目指すのは、マーケティングにとらわれずに“香り”をクリエイトすること。常に市場の原理やルールに縛られる調香師たちの現実に心を痛めていたマルは、彼らの自由を取り戻そうと決意する。つまりクリエイションにあたっては、①時間や予算に制限を設けず、最高の原料や技術を提供する。②創るパルファムを“芸術品”と位置づける。③調香師を作家、マル自身を編集者と見なし、編集者であるマルは、ときには見守り、ときにはともにディスカッションし、ときにはインスピレーションの源となり…と調香師に寄り添い、才能を引き出すことに腐心する。こうして創られたパルファムは、調香師の名前が記され、世に出ていく。まるで一編の小説のように。